「コーダラインらしさ」とアイルランド人の感性―最新作は昨年秋に発表したライブ・アルバム『Our Roots Run Deep』です。アイルランドで行なったアコースティック・ツアー中、ダブリンのオリンピア・シアターで収録したんですよね。スティーヴ:うん。オリンピアは歴史あるヴェニューで、以前から、どうしてもあそこでライブ・アルバムを収録したかったんだ。
ジェイソン:ただアイルランドで一番ブッキングするのが大変な場所だから、なかなかタイミングが合わなくてね。しかもツアーを企画した当時は、まだまだパンデミックが悪化して状況が変わる可能性があったから、とりあえず国内だけを周ることにしたんだ。でもアコースティックでプレイするのは本当に楽しくて、結局ヨーロッパ中を旅することになったよ(笑)。
―ライブ・バージョンのグレーテスト・ヒッツみたいな作品でもありますよね。スティーヴ:そうだね。代表曲を網羅したセットだったし、プロダクションをはぎ取ることで、正式にレコーディングされる前の、これらの曲が生まれた時の姿を再現したかったんだ。
ジェイソン:これまでで最も無防備な姿をステージでさらけ出した、僕らにとってのMTVアンプラグドだね。そしてオリンピアは、言わばアイルランドにおける音楽のスピリチャルなホームなんだ。僕自身あそこでR.E.M.を始め色んなバンドを観たし、壁から音楽が滴り落ちているような場所だけに、そこに僕らの名前を刻むというのは感慨深かった。
―その後もあなたたちはツアーに明け暮れていますが、新しい曲作りも進めているんですか?スティーヴ:うん。来年くらいにはアルバムを出せたらと思っているけど、はっきりしたことは何も言えない。今はツアーがすごく順調で、人々が僕らの音楽に愛情を抱いてくれている間は、頑張ってやっていこうっていう気持ちになれるし、本当にありがたいことだよ。
―例えば美しいメロディだったり、インティメートな感覚だったり、エモーションをむき出しにするところだったり、人々が求める“コーダラインらしさ”みたいなものがありますよね。曲作りをする時に、それがプレッシャーになったりしますか?ジェイソン:人々が僕らに求めるコーダラインらしい要素って、まさに僕ら自身が重視している部分でもあり、自然に出て来るわけだから、プレッシャーにはならないかな。
スティーヴ:うん。例えば『One Day At A Time』からのシングル『Wherever You Are』なんかは、まさにファンが求めているコーダライン節の曲だと思うけど、曲を書いた時の僕らの頭の中に、そういう意図は全くなかった。とはいえミュージシャンとして新しいことに挑戦するのは重要だし、うまく自分たちらしさと新しさのバランスを見つけるしかない。純粋にコーダライン的な曲なら永遠に作り続けられるからね(笑)。ただ、悲しい音楽を作るバンドだと思われがちで、そこは誤解されているのかな。確かに代表曲はどれも物悲しいかもしれない。でも同時にアップリフティングでもあるし、僕らの曲には昔から常にノスタルジックなところがあったと思う。なぜか分からないけど、自分たちのスタイルなんだろうね。
ジェイソン:それはすごくアイリッシュなスタイルでもあるんじゃないかな。僕らが親しんで育ったアイルランドの文化においてストーリーテリングは重要な位置を占めていて、曲にして歌うことでストーリーを伝えてきた国だからね。
スティーヴ:特にアイルランド人の男性は自分の感情について話さないから、想いを曲に込めることができる音楽は、感情のはけ口としても重要な役割を果たしているんだよ。
Photo by Kazumichi Kokei―最後に余談ですが、ワン・ダイレクションの一員だった頃のハリー・スタイルズと曲作りをしたことがあるそうですね。その時のことを教えてもらえますか?スティーヴ:そうそう、ある日僕らのライブを観に来てくれて、それをきっかけに一緒にパーティーに行ったりもして、ごく短い時間だったけど曲を書いたんだ。当時からスター性を満々と備えていたし、いいヤツだったよ。曲はリリースされずに終わったけど。
ジェイソン:自分が何をやりたいのか見極めるために、色々実験していた時期だったんだろうね。そのプロセスに僕らが何らかの貢献ができたのなら、光栄な話だよ(笑)。
コーダライン
『Our Roots Run Deep』
再生・購入:
https://found.ee/k643JS