リアム・ギャラガー来日公演を総括 オアシスを継承する意思、世代を超えたファンとの絆

リアム・ギャラガー(Photo by Mitch Ikeda)

SUMMER SONIC 2023に出演するためリアム・ギャラガー(Liam Gallagher)が日本に滞在している間に、今月リリースされたばかりのライブ・アルバム『Knebworth 22』が全英アルバム・チャートでNo.1を獲得した。ソロキャリアの大きな到達点であるネブワース公演のライブ盤がチャート首位に立った喜びを、リアム自身も19日にX(Twitter)で(彼にしては素直な)感謝の言葉を添えて投稿。必然的に、8月22日豊洲PITでSUMMER SONIC EXTRAとして開催された単独公演は、祝祭感に包まれたものになった。

入場して開演を待つ間、場内に流れるBGMはT.レックスやセックス・ピストルズ……選曲はリアムの兄でギャラガー兄弟の長男、ポールが担当していたようだが、それを聴きながら、「Cigarettes & Alcohol」を初めて聴いた瞬間の衝撃を思い出していた。今では単にグラム・ロックっぽいロックンロールとして認識されている曲かもしれないが、1994年当時はT.レックスのリフにジョニー・ロットンのようなボーカルを組み合わせるバンドなんて他にいなかったのだ。ありそうでなかったことをやすやすと実践してしまう、コロンブスの卵的な面白さが初期のオアシスにはあった。そうした“サンプリング以降”の編集センスでロックンロールを更新するスタイルは、メイン・ソングライターであったノエル・ギャラガーに依るところが大きいが、ノエルのコンセプトに血肉を与え、世間を振り向かせることができた最大の武器が、リード・シンガー=リアム・ギャラガーの強烈な声だったことは疑いようがない。

そんなことを考えながら勝手に熱くなっていると、いつの間にかBGMはストーン・ローゼズの「I Am The Resurrection」に。リアムの登場を待ちきれなくなった観客が、オアシスの曲かよ!と思うほどめちゃくちゃ騒いで盛り上がる。この曲をフルで流し終えたらちょうど開演、という算段になっているのは明らかで、今は活動していないローゼズもオアシスも、全ロックンロールをひっくるめて担う覚悟あり、という意思表示のようにも思えた。そしてBGMが終わり猛烈な歓声が上がるなか、暗転してオアシスの「Fuckin' In The Bushes」が流れ、メンバーが入場……100点のオープニングだ。


Photo by Mitch Ikeda

バック・バンドはギタリスト3人を含む6人を核に、曲によってコーラス2名や、リアムの息子、ジーン・ギャラガーがドラムスで加わる大所帯。リードギターの多くはダフィーやバクスター・デューリーのバックでプレイしていたマイク・ムーアが弾き、カサビアンのサポートでお馴染みだったジェイ・メーラーは思ったよりリードを任される機会が少ない。ボーンヘッドの後任として加わった3人目のギタリスト、リトル・バーリーのバーリー・カドガンはプライマル・スクリームで弾くときよりもかなり控えめで、主にリズム・ギター要員としての役目に徹しているように見えた。

ベースは引き続きベイビーシャンブルズのドリュー・マッコーネルが担当。ドラムスは怪我のため一旦離脱したダン・マクドゥーガルの代役として、アダム・フォークナーが急遽参加してツアーをこなしており、結果的にベイビーシャンブルズの傑作『Sequel To The Prequel』(2013年)でプレイしたリズム隊がリアムのバックを支えている。そしてキーボードは、レギュラーメンバーであるクリスチャン・マッデンが引き続き担当。彼は日本でもアルバム『These Were The Earlies』(2004年)がリリースされ、サイケ・ポップ好きの間で話題になったジ・アーリーズの一員だった。

ド頭からオアシスの「Morning Glory」「Rock 'n' Roll Star」でたたみかけ、「Wall Of Glass」へとつなぐ流れはサマソニ大阪、東京と同じ。しかし、ここからがひと味違っていた。2枚目のソロ作『Why Me? Why Not.』の冒頭を飾っていたのに日本公演ではなかなかやってくれなかった「Shockwave」を披露、これは待っていた人が多いはず。ガレージ感満点のギターリフが活きてトリプルギター編成にした効果がよく出ていたし、こういうブルージーな曲が今のリアムの声には合っている。

「Better Days」ではジーン・ギャラガーが加わってダブル・ドラムスに。親バカだと笑う人がいるかもしれないが、ビートを立体的に聴かせるうえでジーンの起用がちゃんと効いていて、スタジオ・バージョンよりもスケールが大きいグルーヴを生んでいた。適材適所で、単に思いつきっぽい使い方ではなかったことを強調しておきたい。ソロ・シンガーとして復活後、こういう前向きな歌詞も書けるようになったリアムがジーンと一緒に演奏している様子も、長年のファンとしては感慨深いものがあった。

続いてオアシスの「Stand By Me」「Roll It Over」「Slide Away」を立て続けに。メンバー・チェンジ後の過小評価されている4thアルバム『Standing On The Shoulder Of Giants』から、「Roll It Over」を選んでくれたことが何ともうれしい。『Knebworth 22』で取り上げられて再度光が当たるようになったこの曲、ジェイ・メーラーによるいぶし銀のリードギターも絶品だった。

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