メタリカのラーズ・ウルリッヒが語る、還暦目前の現在地とハードロックの現状認識

肉体面において、今の俺たちはここ数年で最もいい状態にある

ーメタリカのファンは、あなた方が今でもテンポが早くてヘッドバンギングできる曲を書いていることに満足しているのは確かなようです。

エネルギーや性急さ、それに歌詞やテーマという面でも、『72 Seasons』はオーディエンスが求めているものと合致したんだと思う。歳をとることっていう、誰もが経験するテーマに正面から向き合い、脆さを露呈することで共感を得られたんじゃないかな。メンバーの2人は60歳を過ぎたし、他の2人ももうすぐ還暦だ。俺らはその事実を隠したりせずに、むしろ祝おうとしてるんだよ。そういうことを考慮しても、今回のアルバムに対する反響の大きさは想定外だったね。

ー歳をとることというのは『72 Seasons』の重要なテーマです。還暦を目前に控えた心境について語ることで、ファンとの関係性に変化があったと思いますか?

何もかもオープンにしようとしたわけではないけど、人としての欠点や透明性っていうのは、今でも俺たちにとって重要なテーマであり続けている。メンバー全員が歳を重ね、個人としてもバンドとしてもライフステージの後半を迎えるなかで、俺たちは様々なマインドセットや理解しようとしていること、そして理解できずにいることを他人と共有しようとしているんだ。そのトピックについてのファンとの対話はすごくピュアだと感じてる。歳をとるにつれて、若くあり続けるための手段を追い求めたりしなくなるし、過去の栄光にすがるような真似もしなくなる。前に進むしかないんだよ。40年が経った今でも、未来のことしか考えないっていう姿勢は変わっていないんだ。

ー「Lux Æterna」や「Too Far Gone?」のように、今作には極めてテンポの速い曲が多く収録されています。同世代のアーティストの大半がテンポを下げようとするなか、メタリカはなぜ速い曲にこだわるのでしょうか?

肉体面において、今の俺たちはここ数年で最もいい状態にあるんだ。いうまでもなく、俺たちの曲の演奏にはかなりの体力を必要とするけど、調子がいい時もあればそうじゃない時もある。ロックダウンが終わってまたライブをやり始めた時、ステージに立ち続けるためには健康管理と賢明な「ライフスタイルの選択」が何よりも重要だって悟ったんだ。

このアルバムの曲をライブで演るのはすごく楽しいよ。しっかりコントロールできてると感じてる、曲に振り回されるんじゃなくてね。ライブで演れない曲を書くアーティストもいるけど、それは俺たちのやり方じゃない。12曲のうち8曲をこれまでにライブでやったけど、残りの4曲もステージでどう再現するかを決めてるし、エキサイトしているよ。





Translated by Masaaki Yoshida

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