メタリカのラーズ・ウルリッヒが語る、還暦目前の現在地とハードロックの現状認識

今作は音がいいって言ってくれる人も多い

ーアーティストとして、『72 Seasons』で新たな扉を開いたと感じていますか?

不自然だったり、ワンパターンに陥ることなく、エネルギーとスピード感、そしてパワーに満ちたレコードを作り上げたことは誇りに思ってる。曲作りの過程で生まれてきたエネルギーを、しっかりと音源に内包させることができたから。

あと、今作は音がいいって言ってくれる人も多いんだよ。16年間一緒に仕事をしているグレッグに、俺たちは絶対の信頼を寄せてる。俺たち4人とも、それぞれの楽器をイメージ通りの音で鳴らすことに徹底的にこだわったから、完成させるまでにすごく時間がかかった。でも俺がどういうドラムの音を欲しているかを、グレッグに言葉で伝える必要はほとんどなかった。互いのことをよく知っているから、言わなくてもわかるんだよ。過去のレコードと比べても、今作ではグレッグが各メンバーの音だけじゃなく、バンド全体としてのサウンドをうまくまとめてくれたと思う。

音に対する好意的なコメントの多さには驚かされたよ。AirPodsや他のヘッドフォン、あるいは昔のMemorexのCMに出てくるようなどデカいスピーカーだったり、リスニング環境に関係なく評判がいいんだ。ありがたいことにね。

ーサウンドに関することですが、「Inamorata」の最後ではメンバーの1人が「最高のボタン」なるものについて語っています。アルバムの最後を締めくくる部分ですが、あれはレコーディングに関することですか?

ボタンっていう言葉は曲の終わりを指してるんだ。つまり最後の数ヒット、あるいはアウトロのことさ。バンドが10組いるとしたら、10組とも自分たちの間でしか通じない意味不明の言葉をたくさん使ってるはずだよ。俺たちの場合、曲の最後を指す言葉がボタンなんだ。



ー本作には新たな試みも見られます「You Must Burn」におけるボーカルハーモニーは独特で、超俗的な印象さえ受けます。

曲の他の部分との対比という意味で、あの部分ではドリーミーな雰囲気を出そうとした。ストレートな歌ではなくて、ムーディでミドルエイト的なものが欲しかったんだ。(ベーシストの)ロバート(・トゥルージロ)があの部分を歌ってる。曲の一部だけど、独自の作品としても成立しているんじゃないかな。



ーステージで演奏するようになってから、楽曲の解釈はどのように変化しましたか?

より明確な緩急をつけるといったアレンジはしているよ、特にイントロはね。このブレイクは長くして、代わりにこの部分を短くするとか。でも劇的に変化したものはないかな。曲を書いてレコーディングして、ライブで演ろうってことになる。その段階になって改めて曲をさらって、練習を重ねてステージで披露し始める。今の段階を数値にすると8ってところだけど、感触は悪くない。きっとこれからよりディープになっていくだろうね。向こう1年間はライブの予定が入っているから、それが終わる頃にはきっと8以上になっていると思う。楽しみだよ。


Photo by Tim Saccent

Translated by Masaaki Yoshida

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE