indigo la Endが語る、「大衆性」と「哀愁性」を備えたバンドの現在地

プレイの裏側とリファレンス

―それぞれのプレイについても聞くと、さっき栄太郎さんがDJの話をしてくれましたけど、DJをやってることとドラマーとしてのプレイにはどんな相互作用があると言えますか?

佐藤:時期によって、どう相互作用するかは変わるんですけど、このアルバムの2年ちょっとの制作期間でいうと、ミニマリズムとの関係ですかね。どんどん削ぎ落として、フックのないドラムを一回完成させてみることが自分のキャリアにおいて必要なんじゃないかと思って、フィルを何度もリピートするとか、そういうことを意識していて、今思い返せばDJの内容も同じような流れになってました。ただアルバム制作が中盤になり、やっぱりロックバンドはフックが多い方が楽しいよね、みたいな感じになって、その谷を抜けた感じを個人的には感じるんです。

―それこそ最後に作った「カンナ」とかは、谷を抜けた先の表現になってるというか。

佐藤:結局谷の一番最後、一番深いところで感じたのって、「ミニマム・イズ・マキシマム」だったんですよ。そういう成長を経てできたのが「カンナ」なので、めっちゃ開けてるんですけど、叩いた回数はそんなに多くなくて、ただ一発のガシャっていうシンバルの音符は非常に長いっていう、そこは成長できてよかったなと思います。


Photo by Mitsuru Nishimura

―長田くんは『夜行秘密』のときにトム・ミッシュの曲を挙げて、「すべてのフレーズをちゃんと分解、理解したうえで意味を持たせてあげたいという気持ちにさせられた」とコメントしていたと思うんですけど、そのことをもうちょっと噛み砕いて話してもらえますか?

長田:普通にアルペジオを弾いてるだけじゃ意味がないから、その中でちゃんとメロディになるように作らなきゃいけないとか、このコードはこのコードと友達だよっていうのを、座学してるような感覚でやったりして、それが僕の中での「意味を持たせる」。「分解する」はこのコードトーンがどうのこうのとか、そういうのを自分の中で理解していくっていうことですかね。

―それを解析していく上でトム・ミッシュが教科書みたいな存在になっていたと。ちなみにそれ以降、この2〜3年でそういう存在はいましたか?

長田:この2〜3年はInstagramをよく見るようになって、全然有名じゃない素人なんだけど、こんな奏法あるんだとか、こんな音の出し方あるんだとか、そういうことをいろいろやってる人が多いから、そういうのを見て刺激を受けたりしました。あと「忘れっぽいんだ」のフレーズはコリー・ウォンになりたいと思って作ってたり、「ヴァイオレット」はネオソウルが流行ってるからやってみようとか、そういうのは反映されてるかもしれない。



―近年ネオソウルっぽいプレイを取り入れてきたことによって、1周回って初期の、ポストロックとかを聴いてやってた頃のフレーズに対しても理解が進んで、アルペジオひとつにしても昔とは違うものになったのかなって。

長田:そうなのかも。いいとこどりができるようになりましたね。


Photo by Mitsuru Nishimura

―後鳥さんは以前ベースのフレーズ考えるときに、「シンプルでいて、口ずさめて、曲に馴染む」ということをポイントに挙げてくれていて、そこがインディゴのポップさをさらに押し上げていると思うんですけど、今回はどんなことを意識していますか?

後鳥:「忘れっぽいんだ」は完全にルートで、どっしり構えるみたいな感じのイメージではいるんですけど、「ヴァイオレット」は映画的というか、イントロでもちょっと明るい面を見せたりとか、そういうストーリー性があった方がいいかなっていうのは考えていて。ただ基本的にはシンプルなところとか、口ずさめたりとか、フックが少しあるようなものっていうのが、引き続きテーマではあります。


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―リファレンス的な話はどうでしょう?

後鳥:「ヴァイオレット」は原田さんのイメージが強かったので、キセルのイメージだったんですよね(キセルも原田に楽曲提供をしている)。だからちょっとキセル的な、打ち込みっぽいんですけど、無機質であり、ちょっとふわっとした感じというか。「名前は片想い」のCメロはもともとピンク・レディーの「ペッパー警部」だったり、あとはロスキャン(ロス・キャンペシーノス!)っぽい、ちょっと明るい、ハッピーな感じも意識しました。

ーロスキャン懐かしい。やっぱり00年代感がひとつのキーになってるのかも。

後鳥:そうかもしれないですね。ロスキャンめっちゃ好きだったんですよ(笑)。



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