indigo la Endが語る、「大衆性」と「哀愁性」を備えたバンドの現在地

ボーカルの進化、「アルバム」との向き合い方

―川谷さんのボーカルも非常に印象的でした。低い帯域の生かし方とか、ファルセットはファルセットでも初期の頃とは違う帯域が出ているように感じたし、メロディもフローも面白くて、かなり緻密かつ大胆に作られているなと。

川谷:『夜行秘密』のときよりはだいぶいろんなものに手を出しました。「プルシュカ」は全ファルセットみたいなサビで、昔だったら「煙恋」とかもそうですけど、あのときよりもだいぶ声が太くなった感じもあるし、あとは高山さんのミックスでより映えるというか、高山さんのミックスの感じも掴めてきたから、この感じでやるとすごくいい感じにしてくれるだろう、みたいなのもあって。

ー想定して考えられるようになったと。

川谷:「パロディ」でふざけた感じでラップみたいなのをやってたり、「愉楽」は基本全部低くてメロディ的にも派手さはないけど、多分(井上)うにさんだったらこういうのを面白い感じにしてくれるだろう、みたいな、エンジニアさんへの信頼感でいろいろやれたっていうのはありますね。だからトゥーマッチにはしないというか、あえてわりとシンプルにした部分もあれば、「Gross」みたいに変なことをやってるやつもあるし、今回15曲あるので、かなり広がりを持たせたられたかなって。


Photo by Mitsuru Nishimura

―コーラスではDADARYのREISさんや相沢さん、野田愛実さんも参加していて、川谷さんはいろんなボーカリストに楽曲提供もしてるから、そういうシンガーたちから刺激を受ける部分も大きいのかなと。

川谷:やれることを増やしていかないと同じになっちゃうから、いろいろ増やしていかないととは常に考えてるんすけど、でも今だったらもっとできるのにな、みたいなのがちょっとあったりします。みんなそうだと思うんですけど、そうやってまたすぐやりたいことが出てくるのはいいことなのかなって。俺らやりきった感がいつもないんで、いつもやりきってないけどそのままツアーに突入して、その間に新曲作って新曲のほうが好きだなってなるのが毎回の流れなので(笑)。「チューリップ」ができたときもそういう感じだったし、『哀愁演劇』の先にもまた開けるものがあるんだろうなって。毎回アルバムが出るとアルバムの先の話をしたくなっちゃうんですよね。僕らにとってみればもう録って結構経ってるんで。

―2021年に出てる曲とかはもうずっと演奏してるわけだしね。でもこの曲順で聴くとまた聴こえ方が変わったりもするし、そこはアルバムというパッケージングの面白さかなって。

川谷:いいアルバムの定義がもうわからないんですよね。もうアルバムより単曲文化だから、アルバムを何年も出してないのが最近普通になってきたじゃないですか。そもそもアルバムを出さない人も増えたし。そういう中でアルバムを買ってくれるのは顔が見えてるファンの人なので、その人たちに向けてももちろんやらないといけない。逆に「名前は片想い」だけ知ってるような人たちにどう届けていくかみたいなことは、もうちょっと考えないといけないなとは思ってます。

―そういう人たちがこのアルバムを聴いて、「あ、この曲も好き」みたいになる可能性は十分あるし、15曲という曲数がその幅を担保するものになってるような気もします。

川谷:でも曲数が多すぎるのが枷になってる気もするんですよね(笑)。この前対バンしたSaucy Dogとかって、ミニアルバムしか出してないじゃないですか。あれはあれで時代に合ってる気もするし。でも最近出たドージャ・キャットのアルバム(『Scarlet』)は17曲入ってたから、「ドージャ・キャットが17曲ならまあいいか」ってなりました(笑)。

佐藤:(トラヴィス・スコットの)『UTOPIA』も19曲だよね。

―時代によって揺り返しもあるだろうし、1年経ったらまた長さに対する感覚も変わってるのかもしれない。

佐藤:タイラー・ザ・クリエイターの『CALL ME IF YOU GET LOST』はリリースから2年経ちましたけど、ああいうミックステープっぽい進み方が今は一番古い気がするんですよ。そう思うと、3〜4分のしっかりした曲が並んで、曲間の秒数もしっかり川谷さんが考えてくれて、みたいなのは逆に新しいんじゃないかなとも思います。ちょっといいように捉え過ぎかもしれないですけど。


Photo by Mitsuru Nishimura

―アルバムのトータリティで言うと、歌詞の面も大きいと思います。漢字2文字のタイトル、「芝居」「愉楽」「暗愚」は結構ヘヴィなイメージがあって、「Gross」や「プルシュカ」もそう。『哀愁演劇』というタイトルに引っ張られてるところもあると思うけど、アルバムというサイズだからこそ、じっくり聴き込んで、意味を少しずつ咀嚼していくみたいな、そういうタイプの歌詞も今回より多くなってるなと。

川谷:「愉楽」の“死んで欲しいって思った”とか、たしかにアルバムじゃなかったらこういう歌詞は書いてないですね。リード曲として考えるともう少しソフトな歌詞になっちゃうから、アルバムだったから書けた、みたいな歌詞は結果良かったです。個人的には、「プルシュカ」が一番気に入ってます。

―「プルシュカ」をアルバムの最後に置いたのは何か理由がありましたか?

川谷:「ヴァイオレット」と迷ったんですけど、すでにリリースされてる曲を最後にするのもなって。「プルシュカ」は曲の終わり方が結構しっかり終わってて、本当だったら最後の曲はあんまりしっかり終わらない方がいいなと思ってたんです。『夜行秘密』の最後に入ってる「夜の恋は」はドラムがリットして終わってて、ああいうちょっと余韻を残して終わる感じの方がインディゴっぽいのかなっていうのもあって。でも今回は「プルシュカ」以外ないなと思ったし、バンッて終わるのも演劇の終わりみたいでいいかなっていうのもあったから、『哀愁演劇』らしい終わり方になったと思いますね。

【写真ギャラリー】indigo la End撮り下ろし(記事未掲載カット多数)




indigo la End
『哀愁演劇』
発売中
配信・購入:https://indigolaend.lnk.to/aishuengeki

TOUR 2023-2024 「藍衆」
2023年12月2日(土) 埼玉 戸田市文化会館
2023年12月3日(日) 東京 東京国際フォーラム・ホールA
2023年12月9日(土) 京都 ロームシアター京都・サウスホール
2023年12月22日(金) 広島 広島市南区民文化センター
2023年12月23日(土) 岡山 岡山市立市民文化ホール
2024年1月7日(日) 大阪 フェスティバルホール
2024年1月8日(月・祝) 静岡 静岡市民文化会館・中ホール
2024年1月14日(日) 群馬 高崎芸術劇場・大劇場
2024年1月21日(日) 愛知 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
2024年1月27日(土) 香川 レクザムホール(香川県県民ホール)
2024年2月4日(日) 栃木 栃木県教育会館
2024年2月12日(月・祝) 福島 いわき芸術文化交流館アリオス・中劇場
2024年2月18日(日) 岩手 トーサイクラシックホール岩手(岩手県民会館・中ホール)
2024年2月24日(土) 神奈川 パシフィコ横浜・国立大ホール
2024年3月2日(土) 福岡 福岡市民会館・大ホール
2024年3月3日(日) 熊本 熊本城ホール・シビックホール
2024年3月9日(土) 石川 金沢市文化ホール
2024年3月10日(日) 長野 ホクト文化ホール・中ホール(長野県県民文化会館)
2024年3月16日(土) 北海道 幕別町百年記念ホール
2024年3月17日(日) 北海道 カナモトホール
2024年3月23日(土) 宮城 仙台 GIGS
2024年3月24日(日) 新潟 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
2024年3月30日(土) 山梨 YCC県民文化ホール・小ホール(山梨県立県民文化ホール)
2024年4月3日(水) 東京 NHKホール (東京)
2024年4月13日(土) 長崎 長崎ブリックホール
2024年4月21日(日) 沖縄 ミュージックタウン音市場

indigo la End オフィシャルサイト:https://indigolaend.com/index2.php

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