HR/HMの「生ける伝説」を目撃「Power Trip」レポ

ジューダス・プリーストの生き様

2日目に当初ラインナップされていたのはオジー・オズボーンとAC/DCだった。オジーは当初この日を約5年ぶりに立つステージとして位置付けていたものの、7月に体調がまだ復帰に見合うものには至っていないことを理由にキャンセル。その代わりにオジーが個人的に交友のあるジューダス・プリーストが務める形に。2023年に彼らがステージに立ったのはこの日だけなので文字通り、オジーのための英断だったといえる。そんなジューダスは開演前にブラック・サバスの「War Pigs」を流し、会場全体がシンガロングしてオジーに捧げる粋な計らいも。

その後、スクリーンを使って大々的にアナウンスされたのが、2024年3月リリース予定のニューアルバム『Invisible World』。実に6年ぶりとなる新作の報せに大きな歓声が上がる中、ヘヴィメタルシーンを50年もの長きに亘って牽引してきたジューダスのライブがスタート。その生き様を彼らのクラシックスと共に叩きつけた。ハイライトは現在パーキンソン病と闘うオリジナル・ギタリスト、グレン・ティプトンが登壇しての「Metal Gods」の演奏。ひたむきにギターの演奏に集中するグレンにエールを送るかのように大きな笑顔を贈るイアン・ヒル(Ba)の姿が大観衆の心を温めた。


ジューダス・プリースト(Photo by C.WILSON for Power Trip)



そしてこの日のヘッドライナーは実に7年ぶりのステージ復活となったAC/DC。2016年にブライアン・ジョンソン(Vo)に聴力の問題が発生、翌17年にはマルコム・ヤング(Gt)が他界と、バンド存続を脅かす大きな苦難を乗り越えての復活となった彼らを迎えるべく会場はデビルホーンのヘッドバンドを売るベンダーがあちこちに登場。グッズ売り場には他のバンドとは群を抜いて長蛇の列が出来ていた。開演直前に「今夜は凄まじい量のパイロが使われます」との警告、40台を超える高く積まれたマーシャル・アンプに大量のドライアイス。そして天井高くにスタンバイされたヘルズ・ベルを目にするだけでアドレナリンが放出した。


Photo by A.Boyle for Power Trip

2020年リリースのアルバム『Power Up』からライヴ初披露となった「Shot in the Dark」や「Demon Fire」はもちろん、アンコールを含めた全24曲で飢餓状態にあった我々ファンが聴きたかった往年の名曲を余すところなく披露。「Highway to Hell」で突然ブライアンのハイトーンヴォイスが出なくなるトラブルがあり、間奏部分でスタッフがブライアンのイアモニを調整に来た時には声ではなく耳に問題が?とも心配したことはあったが、76歳とはいえそこはやはりモンスター・ボーカリスト、その後はしっかりと立て直していたのはさすが。アンガス・ヤング(Gt)も広大なステージの端から端、中央に伸びる花道まで軽やかに駆け回り、この方にはスポットライトは必要ないのではと思えるほどのオーラを放ちながら魅了してくれた。宣言通り、惜しみないパイロと1日目よりもマシマシの花火でド派手な2日目が華々しく幕を閉じた。


AC/DC(Photo by A.Bonecutter for Power Trip)



それにしても連日40度近い気温でAC/DCが終わる真夜中近くになってやっと30度を下回るような灼熱の砂漠地域。演奏するバンドも決して楽な環境ではなかったと思うが、テント生活を送る観客もかなり体力を奪われている様子で、全体的な盛り上がりが今ひとつだったのは少し悔やまれるところ。


Photo by C.WILSON for Power Trip

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