HR/HMの「生ける伝説」を目撃「Power Trip」レポ

メタリカの信念

3日目のトップバッター、トゥールは元々他の5組と比べてキャリアが若いこと(※唯一の90’sバンド。それでも結成33年)や他の出演バンドとは一線を画す音楽スタイル故、観客の集まり具合は今ひとつだったが、しかしながら彼らのライブを観たことがある人ならばご存知の通り、彼らは観客のテンションに影響されない我が道を行くバンド。ストイックなまでに自らのアートと対峙することに美学を見出すかのような姿勢はこの日も徹底され、70分という短時間のセットで完璧な演奏。このフェスのステージでは一貫してステージの左右にあるモニターがサイドも繋がって広大なヴィジョンを映し出すことができたのだが、その巨大なスクリーンを6バンド中最も効果的に活用していたのがトゥールだったことも伝えておきたい。


トゥール(Photo by Q.TUCKER for Power Trip)



クロージングアクトはメタリカ。彼らのステージではステージ前のサークル上のピットエリアが特別に登場。聞いた話によれば会場内でスタッフから声がかかったラッキーな人々がそのサークル内へのパスをもらっていたらしい。そしてそのサークルを取り囲むようにピットエリアの真ん中ほどまで迫り出した半円形の花道が作られており、ジェイムズ・ヘットフィールド(Vo, Gt)を筆頭に、カーク・ハメット(Gt)やロバート・トゥルヒーヨ(Ba)がどんどんやってくる。まるで観客よりもメンバーの方が我々ファンに触れたいと思ってくれているかのようだった。「Fade to Black」を演奏する前にジェイムズが語ったメッセージを聞いた瞬間、彼らのアプローチに込められた思いを感じ取った気がした。

「この曲は自殺以上のこと……話すべきことではないようなことについての曲だ。もし君が暗闇を感じているなら友達と話すんだ。メタリカ・ファミリーの君が必要だ」

この日は他にも1986年に交通事故で帰らぬ人となった元ベーシスト、クリフ・バートンに「君がいなくて寂しいよ」と語って空を見上げた後に演奏した「Orion」というエモーショナルな場面もあったが、途中カークとロバートの2人が即興で披露した「Funk in the Desert」、「Nothing Else Matters」のイントロでカークがトチり「砂漠で暑いんだよ」とジョークを飛ばしてやり直すような少しリラックスした場面も。しかし総じてとてもタイトかつパワフルなもので、中でもラーズ・ウルリッヒのドラミングに向かう真摯な姿勢が印象的だった。最後はラーズがこんな言葉でまとめてくれた。

「ヘヴィミュージックは生きてるし、もっと高みに登っていくんだ。Fxxk Yeaaahhhh!!!!!」


メタリカ(Photo by C.WILSON for Power Trip)


メタリカ(Photo by C.WILSON for Power Trip)


メタリカ(Photo by C.WILSON for Power Trip)



初回にしてヘヴィミュージック界のトップ・オブ・トップだけを迎えてしまっただけに、このラインナップを超えるような面々を6組集めて開催を継続することは難しいかもしれないが(※Dessert Tripも開催は1度だけ)、この夢のような3日間のことはこれからも来場者の心に深く刻まれていくことだろう。


メタリカ(Photo by C.WILSON for Power Trip)

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