モトリー・クルー/デフ・レパードが示した「未来」の可能性 増田勇一が考察

モトリー・クルー(Photo by Tatsuki Ogawa)

11月3日と4日の両日、Kアリーナ横浜にてモトリー・クルーとデフ・レパードによるジョイント公演「モトリー・クルー/デフ・レパード “The World Tour” 」が行なわれた。どちらも1980年から1981年にかけて1stアルバムを発表し、80年代のうちにビッグ・ネームの仲間入りを果たし、それぞれに40年を超える波乱万丈に富んだ歴史を経てきた。当然ながらお互い年齢的にも近く、同じ時代を過ごしてきたバンド同士ということになる。モトリー・クルーの場合は活動終結とその撤回というプロセスを経てはいるが、ともに今なおシーンの第一線に君臨し続けていることは間違いない。

【写真まとめ】「モトリー・クルー/デフ・レパード “The World Tour” 」

両者の共闘体制によるツアーは、そこにポイズン、ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツを加えた顔ぶれによる『THE STADIUM TOUR』として2022年の夏に北米で実施されているが(そもそもは2020年に実施予定だったが、パンデミックの影響によりまずは翌年に、そして結果的にはさらにもう1年延期となった)、2023年に入ってからもこの2組にスペシャル・ゲストを加えた形での『THE WORLD TOUR』が南米や北米、欧州で継続されてきた。今回はその流れを汲みながらの公演が、ここ日本でもついに実現に至ったというわけだ。会場は、音楽鑑賞に特化された大型会場として注目を集めている、開業間もないKアリーナ横浜である。

筆者は二夜のうち、11月4日の公演を目撃した。両バンドの出演順は夜ごとに入れ替わり、この日の先攻となったのはモトリー・クルーだった。モーツァルトの“レクイエム”と報道番組を模したオープニング映像をイントロダクションに据えながら、定刻通りにスタートした彼らのステージは「Wild Side」で幕を開け、「Kickstart My Heart」で締め括られるという文字通りの鉄板メニューによるもの。一方のデフ・レパードも、最新オリジナル作にあたる『Diamond Star Halos』の1曲目に収められていた「Take What You Want」をオープニングに据えてはいたものの、ヒット曲の数々惜しみなく披露し、最後の最後は「Photograph」でクライマックスを迎えた。

双方ともこれまでの海外公演と大差ないセットリストであり、そこに意外性や、日本公演ならではの特別な趣向といったものは特に見当たらなかった。ただ、そうした事実について「変化に乏しい定番のショウ」といった否定的な見方をする向きもあるかもしれないが、こうした公演においては意外性よりも、鉄則通りのショウが高いクオリティで提供されることは何よりも重要だろう。本サイトに先頃掲載したデフ・レパードのインタビュー記事の中で、フィル・コリンは「日本ではまだ今回のツアーでの曲たちをプレイしていないわけだから、今、演奏内容を変えてしまったら日本に対してアンフェアになってしまう」と語っているが、この発言には頷くしかない。



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