もちろんそれは、この夜を締め括ったデフ・レパードについても同じことだ。ドラマーのリック・アレンが交通事故により左腕を失うという惨事、創成期からのギタリストであるスティーヴ・クラークの他界といった危機を経てもバンドが存続していること自体が奇跡的だともいえるが、これまでの活動歴のみならず自分たちの音楽背景すべてを改めて消化しながら、成熟した視点で独自の音楽を紡ぎあげている近年のクリエイティヴィティの素晴らしさには、目を見張るものがある。それは昨年発表の『Diamond Star Halos』、今年発表されたオーケストラとの共演作『Drastic Symphonies』にも顕著だが、このバンドならではの味わいを楽しめるのみならず、デフ・レパードというVRゴーグルを装着してロック史を探訪するかのような興味深い興奮が伴っているのだ。そして今回目撃したステージについても、そうした近作に通ずる奥深い魅力があった。