聴いている人の身近にあるアルバム、Mr.Children21枚目のアルバムに迫る

Mr.Children

音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。

【前編】音楽評論家・田家秀樹が語る、Mr.Children21枚目のアルバム『miss you』

2023年11月の特集は「Mr.Childrenと高橋幸宏」。前半2週は10月4日にリリースされたMr.Childrenの新作アルバム『miss you』を、後半2週は11月15日にリリースされた高橋幸宏のベスト・アルバムを深掘りする(Rolling Stone Japanでは前半2週分の記事を公開)。

田家:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」マスター・田家秀樹です。今流れているのはMr.Childrenの「ケモノミチ」。10月4日に発売になった通算21枚目のオリジナル・アルバム『miss you』の10曲目ですね。アルバムに先駆けて映像が流れたのがこの曲でした。この曲の映像を見ながらどんなアルバムだろうと想像を巡らせた方もたくさんいらっしゃるでしょう。今週の前テーマはこの曲です。



田家:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」マスター・田家秀樹です。Mr.Childrenの新作『miss you』、先週は前半をお送りしました。6曲目の「アート=神の見えざる手」までだったのですが、1曲目の「I MISS YOU」の中で“20歳前想像していたより20年も長生きしちまったな”という年齢に対して思うことが歌われていました。全編そういう今だから思うこと、今だから歌いたいこと、今まであまり歌ってこなかったことが綴られているアルバムですね。7曲目「雨の日のパレード-」をお聴きいただきます。

雨の日のパレード / Mr.Children

ロマンチックな曲ですね。雨の日の雫とか、そこに当たる光とかそういうキラキラしているようなスローダンスが見える曲。先週もお話ししたんですけども、初めて聴いたときにこんなに自分に近いアルバムは初めてだなと思った、この曲もそんな1曲でしたね。ロマンチックな光景とは別に子どもとのやり取りが歌われている。自分が父親になってミスチルの良さを実感したんだよねという知り合い、洋楽の担当者が2人いるんですけれどもこういう実感なんでしょうね。「雨の日のパレード」もとても染みる曲ではないでしょうかね。

Mr.Childrenのアルバムはどれもそうですけど、一面的になっていないんですね。視点が偏らない。この曲の前、6曲目の「アート=神の見えざる手」はどこか非日常をえぐる、そこに思いを馳せるような想像力を試されるような曲でフリー・ジャズとラップが一緒になっている前衛的な曲でした。終わり方もあとはみんなで考えてくれみたいに突き放すように終わってました。その後にこの曲が流れてくるんですね。いろいろなことを雨の雫が洗い流してくれて、そこにとても日常的なロマンチックな瞬間があるんですよという歌に思えた。年齢的なことが歌われていながら、どこかのおっさんの青春のような美談色っていう、これはかなり自虐的なユーモアもあるんでしょうけど、大人になることを歌っていながらそのことを全然美化もしていなくて、そのこともおっさんみたいなものなんですよと茶化したりもする。そのバランスの良さがMr.Childrenなんだなと思ったりするのですが、こういう曲の流れもそうですね。「雨の日のパレード」はバンドの音になっていないというのも、個人的な曲で個人的な世界を歌っているから多重録音のような音になったんじゃないかなと思ったりもしました。

Rolling Stone Japan 編集部

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