2023年ベスト・メタル・アルバム トップ11

(左から時計回りに)ラガーナ、メタリカ、ジーザス・ピース、カンニバル・コープス、ゴッドフレッシュ PHOTO ILLUSTRATION BY MATTHEW COOLEY. PHOTOGRAPHS IN ILLUSTRATION BY CRAIG MURRAY*; CHRISTIAN PETERSEN/GETTY IMAGES; GRIFFIN LOTZ; PER OLE HAGEN/REDFERNS/GETTY IMAGES; KIM SØLVE*

腹にズドンと来るドゥーム・メタルから、ヒップホップの要素を盛り込んだインダストリアル・メタル、アヴァンギャルドなブラック・メタル、時代を先取りしたスラッシュ・メタルまで、さまざまなメタルのアルバムを米ローリングストーン誌が選出。今年の11枚はこれだ!

「最大ボリュームの10を超えて11まで行くぜ」という映画『スパイナル・タップ』に登場する有名なジョークのように、2023年のベスト・メタル・アルバムとして、ヘッドバンギングの伝統を継承する11枚が選ばれた。この1年は、メタリカやゴッドフレッシュといったメタル界の巨匠たちが得意のヘヴィなギターリフを意外な形で展開し、カネイトやアグリカルチャーといった斬新なバンドがアヴァンギャルドを追求するためのプラットフォームを築いた。これらバンドに共通するのは、リスナーの期待を上回り、本物の「ヘヴィ」の意味を伝えたいという熱い情熱だ。メタルは常に自由主義を掲げてきた。今年もまた、最も個性的な11の作品を紹介する。


11位『To Be Cruel』カネイト(Khanate)


チーチ&チョンはかつて、ブラック・サバスを78回転で再生すると神が見える、とジョークを飛ばした。カネイトは逆に、ブラック・サバスを16回転で再生して悪魔を再現しているようだ。アルバム『To Be Cruel』は、アヴァンギャルドなダウナー・メタル・バンドによる14年ぶりのアルバムだった。今回のアルバムもまた、忍耐こそ美徳という、バンドがこれまで貫いてきた信念が伝わってくる。アルバムに収録された各20分前後の3つの楽曲では、スティーブン・オマリーのギターとジェームズ・プロトキンのベースが延々と同じ調子でうなり続け、ティム・ウィスキダのドラムは1分間に数回しか鳴らない。そして轟音の合間にボーカルのアラン・デュビンが、サミュエル・ベケットの作品に出てくる煉獄に囚われたキャラクターのごとく、泥沼の底から自分の不幸を呪うかのような叫び声を上げる。恐ろしく不穏な作品だ。78回転で再生したらいったい何が起こるかなど、知りたくもない。(K.G.)

10位『Dethalbum IV』デスクロック(Dethklok)


10年以上ぶりにリリースされたデスクロックのアルバムは、完全に野蛮な作品だが、10年も待った甲斐があった。今回の作品でも、ギター兼ボーカルでアニメ番組『メタロカリプス』のクリエイターも務めるブレンドン・スモールと、ダブルキック・ドラムの名手ジーン・ホグランが、世界最高の架空のデスメタル・バンドへ見事に命を吹き込んだ。アニメ『メタロカリプス』の痛快なユーモアのセンスは、「Gardener of Vengeance」、「Poisoned by Food」、「Mutilation on a Saturday Night」といった激しい楽曲の中にも生きている。しかし、作品の荘厳さを引き立てているのは、スモールとホグランのテクニックの高さ(とウルリッヒ・ワイルドの完璧なプロデュース)によるところが大きい。モッシュ・ピットへ飛び込んでいくのに、いちいちジョークの意味など理解する必要はない。(D.E.)

9位 『The Above』コード・オレンジ(Code Orange)


コード・オレンジの最新アルバム『The Above』では、ハードコアなギターリフとボーカルが複雑なメロディーに絡み合い、タイムリーかつタイムレスに耳に飛び込んでくる。ビリー・コーガンが参加したコラボ曲「Take Shape」では、コード・オレンジのメロディックなカオスをバックに、コーガンがヴァンパイア的なボーカルを放っている。まるで90年代から現在まで、ワームホールを真っ直ぐに通過してきたようだ。オープニング曲「Never Far Apart」と2曲目の「Theatre of Cruelty」から、フロントマンのジャミ・モーガンによる悪魔の唸り声を思わせるスラッシーなボーカルと、教会音楽を彷彿させるシンガー兼ギタリストのリーバ・マイヤーズのメローで甘い歌声が、アルバム全体(パンプキンを除く)を通じてコントラストを維持している。楽曲それぞれに特徴的な色を感じるのは、エリック・“シェイド”・バルデローズによる動きの激しいキーボードによるところが大きい。結果、2023年に良い意味で最も期待を裏切る素晴らしいアルバムの1枚が生まれた。(B.E.)

Translated by Smokva Tokyo

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