Novel Core武道館公演を総括 「何者でもない自分」が「誰かを救うヒーロー」になるまで

「異端児」からの「王道」を目指して

音楽に限らずどの分野においても、新しい熱狂は「異端児」と呼ばれる人たちが作ってきた。誰にも理解されなくても、たった一人の人間が狂気を持ち続けた先で多くの人が巻き込まれて、普遍的な利便性や喜びなどを超えた「熱狂」が、もしくは「革命的」と呼ばれるものが、この世に誕生する。Novel Coreはその道筋を信じてここまで歩んできたのだ。その過程において、ずっと強く逞しく美しく在られたわけでは決してない。メジャーデビュー直後に抱えきれなくなって休みを取ったこともある。1stアルバムではまだ、不貞腐れたような感覚で歌詞を書いているところがあったとインタビューでも語ってくれた。そうして人間くさい弱さを抱えながらも、一つひとつ努力を積み重ねてここにたどり着いた事実が、武道館のステージの前に集まった人たちの背中を押していた。

「生きていると、何かやろうとすると、いろんな人からやっかみとか嫌味を言われたりすると思うんだけど、俺のことを応援してくれるみんなには気にしないでほしいです(中略)これだけは絶対に誰にも負けないって言い切れる武器を、ひとつでも見つけるためだけに一生を使ってください。少なくとも俺はそういう生き方をしていきます。そんな俺の武器は何だと思う? ラップ? ファッション? 歌? 最近始めたダンスですか? 全部違うね。俺の武器はたったひとつ。どんなに不可能といわれるような物事に直面したときでも、ほくそ笑みながら直進していく、この大馬鹿っぷりだよ」


Photo by Satoshi Hata


Photo by Satoshi Hata

中盤の「BYE BYE」からは、そんな彼がこの先で唯一無二の音楽スターになっていくことを音そのものでガツンと証明していった。タオルを振り回すポップパンク「BYE BYE」、Novel Coreなりの新感覚ミクスチャーロック「独創ファンタジスタ」、高いラップスキルを炸裂させる「DOG -freestyle-」、ボーイズグループにいる自分を想定して作った曲でダンスも披露した「TYPHOON」、さらにはサプライズゲストで山中拓也(THE ORAL CIGARETTS)が飛び入り参加したボカロ色の強い「カミサマキドリ」など、Novel Coreにはここまで見せてこなかった音楽ルーツがあり、人々をエンターテインさせるための表現手法をまだまだ備えていることを示す。



終盤に差し掛かるところで、メジャーデビュー曲「SOBER ROCK」を歌い終えて、ファンへの想いを語ったあと、Novel Coreにとってのヒーローに向けた言葉が伝えられた。そう、SKY-HIだ。厳しい状況に立たされていた2017年を振り返って、Novel Coreはこう語った。

「当時の俺の救いだったのは、先輩アーティストの存在でもあった。SKY-HIというアーティストがいるんです。日高さん(SKY-HI)との出会いが俺を変えてくれました。理解者とか、味方してくれる人とか、俺のことを大切に思ってくれる人の数が、本当に少なかったのね。俺のことなんかみんなどうでもいいんだって思ってた。でも日高さんはきっと自分もいろんなことを言われて、それでもめげずに続けてきて今があるから、俺を見たときに何かを感じてくれたんだと思う。声をかけてくれて、仲良くしてくれました。そして2017年。この日本武道館で、SKY-HI名義で、2デイズ、日高さんは成功させたの。俺はちょうど一番しんどかった時期で、世間からもバッシングを受けていたし、毎日のように家出してたんだけど、その映像を画面越しに見て、『ああ、続けていったらこんな景色がいつか必ずくるんだな』って、そう信じて今日まで走り続けてきました。改めてSKY-HIにお礼を言わせてください、本当にどうもありがとうございます」

そうして、当時のNovel Coreを救った大切な曲である、SKY-HIの「Over the Moon」を歌唱した。しかも、2017年のSKY-HI武道館公演『SKY-HI Tour 2017 Final "WELIVE" in BUDOKAN』での「Over the Moon」の演出を丁寧にオマージュし、海外の街並み、レンガの壁、月と星が浮かぶ夜空を映像に映し出す形で(今回Novel Coreのチームにライブ演出担当として加わったKensukeは、当時のSKY-HIの公演でダンサーとしてステージに立っている)。この曲をやることを、チーム一丸となってSKY-HIには内緒にしていたという。私の座席の後ろにはSKY-HIが立っていて、そんなサプライズ演出や、Novel Coreの言葉と満員のファンに囲まれながら逞しくステージに立つ姿に、両手で顔を覆うほど涙を流していた。SKY-HIはNovel Coreと出会ったとき、「当時の自分を見ているよう」だと思ったという。Novel Coreに手を差し伸べてきたSKY-HIにとって2024年1月17日は、SKY-HI自身の人生も肯定された日になったのではないかと思う。

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