MGMTが語るTikTokバズ、ポップでオープンな現在地、20年来の友情を保ち続ける奇跡

二人の友情と音楽を作る喜び、日本への想い

─「Dancing In Babylon」でのクリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズとの共演が新鮮でした。あれはどんなイメージでまとめた曲ですか?

アンドリュー:あれは最後の方でまとまった曲のひとつでね。歌詞もメロディも、レコーディングの間じゅうアイデアはあったのに、最後の最後まで今のかたちにならなかったんだ。80年代のバラードみたいな方向になったとき、これはデュエットにしたらどうかと思いついてね。その時クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズのことがパッと頭に浮かんで、彼女と歌う選択肢が明確になった。彼女とは何年も前からコラボしたいとは思っていたけど、タイミングの問題で実現しなくてさ。今回はうまくいって、ブリッタのときみたいにすべてが首尾よく進んで、あっという間にまとまったんだ。これが自然な気がしたしね。



─ちなみに、新作にヒントを与えたレコードや、刺激された音楽は何かありましたか?

ベン:わからないなあ。僕の場合は、アルバムに入っている音には一切影響が表れていない。作っていた当時僕が聴いていたのはすごくアグレッシヴで不快な音がするロック・ミュージックだったし……アンドリューはまた別のものを聴いていたんじゃないかと思うけど。

アンドリュー:自分がエモーションを再現したいと思っていたタイプの音楽はいくつかあるね。そのうちのひとつは、13thフロア・エレベーターズの『Easter Everywhere』に入っている「Dust」。すごくダイレクトで美しくて心を動かされるんだ。僕はあの手の音楽に惹かれるけど、実際に自分でやるのはチャレンジングなんだよね。でも今回は少し作れた気がする。人の感情に響く音楽を作るというのがゴールのひとつだったから。



─最近のインタビューを読むと、何十曲も作ってボツにするような作り方はしていないそうですね。1曲ずつにフォーカスして、丁寧に作った感じでしょうか。

ベン:40曲書いてそこから10曲に絞るとか、そういうのはやったことがないな。多くの人にとってはそれがノーマルなやり方なのは知っているけど、僕たちはディテールにこだわりながら、時間をかけて作るのが好きなんだ。 と言いつつも、少なくとも僕たちにとっては、今回は比較的早くできたアルバムだった。集中して作った期間が1年半くらいでね。でも、余分なネタはほとんどなかったよ。

─初めて来日した頃からあなたたちにインタビューをしていますが、最初から2人はとても仲が良くて、その友人としての関係性がまったく変わっていないように見えます。グループとして活動を始めてからも20年以上になるけれど、こんなに長い間続くグループだと予想していました? 何か友情を保てる秘訣や、コツがあるんでしょうか。

ベン:僕にはわからないなぁ。ただ、相手が誰であれ、20年以上付き合いがあるなんて信じられないよ。このくらい長く、あるいはもっと付き合いが長い友だちが何人かいるけど、こんなに長い時間が経った後でも心が繋がってコミュニケートできるのは奇跡だと思うし、心から感謝している。僕たち2人に関して言えば、友情と、一緒に音楽を作る喜びというのは、切っても切り離せない、間に何事も介入させたくないものなんだ。というのも、これまで2人の間に緊張感が生じるときというのは、大抵人工的なものが原因だったりする。ミュージック・ビジネスがこういうものだから、こういう風にしないといけないからやる、とかね。長年経った今は、自分たちにとっていいと思えない、邪魔になりそうなものからは距離を置くようにしているんだ。今回のアルバムも何が起こるかわからないから様子を見るけど、何かを実現させようというよりも、自分たちが気に入った音楽を作ることができたから出してみたい、ただそれだけなんだ。願わくば、それがいいものになっているといいね。

─音楽作りに対する姿勢が純粋なのも、長続きの秘訣かもしれませんね。契約を消化するためにつまらないアルバムを作ってしまうとか、過酷すぎるツアーを延々とまわり続けるとか、そういう「プロのバンド」にありがちな罠をあなた方はうまく回避してきたでしょう?

(ふたり同時に):そうだね。

アンドリュー:僕たちが今もこうして友だちで、一緒に音楽を作っているなんて、なかなかあり得ないことではあるだろうけど、驚くにはあたらない。僕たちは出会ったとき、お互いにとてもレアで強力な何かを見いだしたからね。ふたりともそれを感じたんだ。僕たちはすごく早い段階で、未来へのビジョンやファンタジーに共通点を見いだしていた。ちょっと皮肉っぽかったり、バカバカしいことだったとしても……商業的な成功よりも、自分たちの絆を掘り下げていこうというね。

─2020年に来日公演が中止になって以降、日本のファンは首を長くしてあなた方が来るのを待っています。もう長いツアー生活はあまりしたくないようですが、近いうちに日本公演をしてくれる可能性はありますか?

ベン:いつだったら理に適うかはわからないけど、日本にまた行きたいと心から思っていることは確かだよ。バンドとしてもお気に入りの行き先のひとつだから、何とか戻る方法を見つけられると思っているんだ。

─ありがとうございます。最後に、日本のファンに伝えたいことは?

ベン:まずは日本にいられない状態が寂しいね。あまりに長い間ご無沙汰しているし。また行きたいと心から思っているし、この記事を読んでくれている人には、僕たちに注目してくれて感謝しているよ。すごくスペシャルなことなんだ。

アンドリュー:ずっと付き合ってくれて、僕たちが通ってきた色んな音楽の道についてきてくれてありがとう。新作も共感して、楽しんでくれることを願っているよ。




MGMT
『Loss Of Life | ロス・オブ・ライフ』
2024年2月28日(水)国内盤リリース
[国内盤特典]
・ボーナス・トラック2曲収録
・歌詞・対訳・解説付き
再生・購入:https://smji.lnk.to/MGMTLossOfLifeRS

Translated by Sachiko Yasue

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