YOASOBIとブリング・ミー・ザ・ホライズンが語る、リスナーに「驚き」を与える楽曲とは?

感情や想いをソングライティングに投影

ーオリーは曲作りをする時、世界との関わりはどのように考えています?

オリー 歌詞を書く時はすごくパーソナルなものになる。ものごとを表現する時は、自分自身でどう解釈したのかということしか書けないから。『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』を作った時は、大きな問題を扱おうと思ってたんだけど、結局は自分が経験したことしか書けなくてね。パンデミックになった時、自分が再び抱えてしまった個人的な問題と闘うことになったんだけど、それって大きな問題にも通じることだなと気づいたんだ。コロナ禍になる前、僕自身はメンタル的にも良い状態にいると、勝手に思ってた。でも実際はバンドが忙しすぎただけで、それがパンデミックになって、家で何もすることがなくなった時に、バンド活動していた時の喜びや興奮がなくなってしまって、それで問題が起こってしまった。それって、世界とか社会がどう動いてるのかというのに、とても似てると思ったんだよ。うまく回ってる時はいい感じだけど、何か小さなことで止まってしまうと、混沌に向かってしまう。社会は壊れやすいものだというのを思い知らされたんだ。たった一つのウイルスで社会のシステム全体が止まってしまう。人類はOKじゃないし、僕だってOKじゃない。だから曲では世界の大きな問題について扱ってるけど、それは僕の個人的な問題とそこからの気づきを通して表現したものなんだ。「sTraNgeRs」という曲では、僕と同じような問題を抱えてる人たちと一緒にいることで、安全とか平和、安らぎを求めるということを、大きな問題にも当てはめてる。そこでは自分の家、自分の国から逃れてきた難民の人たちのことも歌ってるんだ。今のアメリカ、イギリスではこういう人たちに対する反応がすごく冷たかったりする。それと同時に、例えばドラッグの問題を抱えてる人たちに対する反応も冷たい。理解ができないから、中毒者は自己中心的で自己破壊的だと決めつけて、もっと深いところにある原因を見ようとはしない。そういう感じで、パーソナルな視点と大きな問題と結びつけるということを、僕はどの曲でもやってみたんだ。



ーYOASOBIの曲も、小説をベースにしながらも、そこにAyaseさんの解釈や表現が入って、ikuraさんの歌で表現されることで、世界観がより広がっていくような印象がありますね。

Ayase はい。原作をなぞるだけではなく、主人公の感情、物語の中で生まれるいろんなドラマを自分の実体験とか、実際の生活とリンクさせてる部分は絶対にあります。むしろ、そういった主人公の感情を使わせてもらって、言いたかったことを伝えることもできる。リスナーは主人公や物語というフィルターを通すことで、僕の気持ちも汲んでもらえるし、原作も味わえるという構造になってるんです。もちろんバランスは難しいですけど、原作は自分の作品だと思えるくらい深く読みますし、自分の身体を一回通るからこそ、新しく出てくるものになるんです。

ikura 私はどうしても原作者さんにはなれないし、Ayaseさんにもなれないし、主人公その人自身になって歌うこともできないんです。でも、そこには物語を読んだ自分の中だけの感想があるし、ただなぞらえただけではない、自分が経験したことと近い感情を持ってくることができる。「悲しい時こそ、こういう風に歌いたくなるかもな」とか、作品に寄り添った時に出てくる自然な声色やニュアンスがあるので、自分の中ではそういうのを大事にしてます。ファースト・インプレッションで楽曲を聴いて、物語を読んで思ったことも歌に乗せてます。YOASOBIだからこそ生まれる化学反応の良い部分を、自分の歌声でも乗せられたらいいなというのは、すごく思ってます。



ー今回、NEX_FEST出演の話が来た時はどう思いました?

Ayase めちゃめちゃうれしかったです。きっと僕らはジャンル的にも少し浮くだろうし、他はラウドで激しいバンドが出るだろうなっていうのは、その時点で予想できました。でももう「出たい!」という気持ちが強くて、そういう場でも僕らはいいパフォーマンスができるという自信があったので、是非とも出させてくださいということになりました。

ーインタビューでは「僕らが一番デカい音を出す」って言ってましたよね。すごくいいなと思いました(笑)。

Ayase (笑)いつも通りの僕たちが培ってきた今の最大限のJ-POPを、このフィールドでぶつけられたらと思ってます。

オリー デカい音、期待してるよ(笑)。

ーオリーはなぜ一番最初のNEX_FESTを日本でやろうと思ったのですか?

オリー 日本が僕たちを選んでくれたようなものだよ。ずっとフェスを日本でやりたいと思ってて、コロナ禍の前からアイデアを考えてたんだ。僕の好きな音楽の多くは日本のアーティストだからね。他の国でツアーをやる時は誰を連れていくのかでとても悩むんだけど、日本でやる時は悩む必要がなかったよ。僕たちのアルバム『amo』にしても、世界中で日本での反応が一番良かったんだ。『amo』には多様性があるし、サウンド的にもこれまでとは全く異なる音楽になったけど、日本の人たちが一番ワクワクしてくれたし、受け入れてくれたと思うんだ。他の国だと、今はもちろん変わりつつはあるけど、ロックならロックの枠に収まっていないと受け入れられにくかったりする。だから最初に日本でやることで、「音楽とはこうあるべきじゃない?」というのを世界に伝えたかったんだ。ジャンルの壁なんて要らないし、新しいものを好きになるのにも壁なんて要らないから。陳腐な言い方かもしれないけれど、音楽を通していろんな人たちをつなげたいんだよね。

Ayase 最高ですね。ちょうど今日オリーに見せようと思って(自分の部屋に『Sempiternal』のジャケットが飾ってある写真を見せる)。

オリー ワオ、素晴らしいね(笑)。


オリヴァー・サイクス(Photo by Maciej Kucia)

ーYOASOBIは「アイドル」がBillboard GLOBAL TOP200 (Excl.U.S.)で1位を獲得したり、LAで行われた88risingのフェス、HEAD IN THE CLOUDSに出演したりと、海外に出て行くことも視野に入ってきていると思います。そこについては今はどのような気持ちで考えていますか?

Ayase 今は完全に踏み出してる感じなので、このままどんどんたくさんの人に聴いてほしいし、「この国の人はこういう風に思うんだ?」とかリアルな声も聞いてみたいです。僕らはどんな音楽も大好きだし、いろんなものを吸収しながら、僕たちが持ってるJ-POPというコアを崩すことなく、発信し続けられるという自信があります。世界中のいろんなものから刺激を受けながら、どんどん世界に向けて発信していきたいなというのは思っています。最近も旅行でロンドンに行ってきたんですけど、最高すぎて、ここにもう少し長い時間いたら作る曲も変わるだろうなと思ったりしましたね。

ー自分たちのJ-POPの良さのままで海外に届いたというのは大きいですね。

Ayase そうですね。でもこれで「自分たちは世界に通用するんだ」みたいに過信する気はないです。ただ、知ってもらうきっかけになったのはうれしいことだから、ちゃんと受け止めつつ、今度はどんなアプローチをしていこうかということを考えて、ちゃんと楽しみながら挑戦し続けられたらなと思ってます。

ーこれから先は、「J-POPは海外では通用しない」という考えもなくなっていきそうですよね。

Ayase 壁はマジで壊したいと思ってます。偉そうなことを言いたいわけじゃないですけど、みんなどこかで世界に対して恐怖心を強く抱いてたと思うので。「どうせ」みたいなのがあったと思うんですよ。そこの垣根は僕らが崩せると信じてます。

ー実際に楽曲がチャート入りしたり、海外のライブで反響を目の当たりにしたりした時に、自分の中で意識が変わった部分はありますか?

Ayase 届く時は届くんだなと思いました。扉が開いたかどうかまではわからないですけど、穴は開けられたと思うんです。これをどんどん大きくして、ちゃんと扉にして、今後のJ-POPのアーティストたちも、若手もそうだし、僕ら自身もそうだけど、J-POPが普通に世界においても熱いジャンルの一つだよねという風に思ってもらえる日が来たらうれしいなと思ってます。

ikura LAのフェスでステージに立つ直前に、アーティストの紹介があった時に、すごく大きな歓声をもらって、「LAにYOASOBIの音楽が届いてるんだ」って、やっと思えたんです。目に見える形で歓声をいただいた時点で、「待ってくれてる人が本当にいた」って思いました。実際にステージに立って、お客さんが日本語で歌ってくれた時に、Ayaseさんが言うように、本当に穴を開けられたというか、少しだけ見えたというところが、すごく大きな手応えとしてあって。だからこそ、自分たちの音楽でしっかりと扉を開いていきたいなと思ってます。

オリー その姿勢は間違ってないと思うよ。これをやったらもっとビッグになるだろうと思って、自分たちのことを変えてしまうと、正反対の結果を招いてしまうからね。自分たちが本当にやりたいことを追求して結果が出たら、そこで報われた気持ちになるんだ。だから自分たちのままで突き進んでほしい。YOASOBIは世界でも大きくなると思う。K-POPは今めちゃくちゃ大きくなって、アメリカやイギリスでも当たり前の存在になってる。K-POPのグループのソロプロジェクトとなると、よりクリエイティブなものが多かったりするんだけど、そういうのも今は受け入れられてる。若い世代になればなるほど、耳が肥えてきてるし、どんどん深く新しい音楽に興味を持つようになってるからね。今はより多くの人たちがJ-POPのことを理解できるようになってるし、アニメも世界中で大きな存在だから、これからの可能性はすごくあると思うね。

ー今後一緒に何かやれるといいですね。

オリー もちろん。最初にYOASOBIの音楽を聴いた時、一緒にやりたいと思ったよ。

Ayase 今度は僕らがイギリスに行って、何かできるといいですね。

ーオリーがボーカルでフィーチャリングというのはどうでしょう?

Ayase いや、恐れ多くて簡単には言えないです(笑)。

オリー (笑)。

※この記事が掲載された「Rolling Stone Japan vol.25」は書店・CDショップ・ネット書店で現在発売中


左から、Ayase、オリヴァー・サイクス、ikura(Photo by Maciej Kucia)

Styling = Shota Funahashi(YOASOBI), IORI YAMAKI(BRING ME THE HORIZON)

Hair and Make-up = nari(YOASOBI)
Hair = HAYATE MAEDA(BRING ME THE HORIZON), Hair Assistant = REN(BRING ME THE HORIZON)
Make-up = YUKA HIRAC(BRING ME THE HORIZON), Make-up Assistant = BERI(BRING ME THE HORIZON)

Translated by Yuriko Banno

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