girl in redが語る、高揚と憂鬱を揺れ動く次世代ポップスターの現在地

浮き沈みの激しさこそ真骨頂

ヨーロッパのスタジオとオスロのアパートでレコーディングされた本作で、ウルヴェンはこれまでと同様にほぼすべての楽器を演奏している。彼女のトレードマークであるベッドルーム・ポップに磨きがかかった本作をファンがどう受け止めるのか、彼女は一抹の不安を覚えてもいる。「私は自分が生まれ変わったように感じている」と彼女は話す。「だから私自身は、このアルバムの曲が過去の作風とそれほど違うとは思っていない。今私が作るべきものを形にできたと感じてる」。

彼女の楽曲の多くがそうであるように、本作も高揚感と憂鬱の間を忙しなく行き来する。冒頭の 「I'm Back 」で、ウルヴェンは恥じらいさえ窺わせながらこう宣言する。”ただいま、本当の自分/しばらく姿をくらましてた/助けを必要としてたから“。一方、サウンドチェックの際に何の気なしに弾いたメロディを基に、彼女がこのアルバムのために書いた最初の曲「DOING IT AGAIN BABY」はムードが大きく異なる。「サングラスをかけて通りを歩く自信満々で生意気なビッチ、そういう自分を表現した曲」と彼女は話す。




アルバムの全編が虚勢に満ちているわけではない。シングル曲 「Too Much」はまさにそういう曲だが(彼女は母親から「黙りなさい」といつも言われていた)、「Phantom Pain」や「Pick Me」はウルヴェンが恋愛において必ずしも満たされていたわけではないことを示している。サブリナ・カーペンターをゲストに迎えた「You Need Me Now」では、2人は元恋人を記憶の彼方へと葬り去ってみせる。昨年のスウィフトの『Eras』ツアーの異なる公演でオープニングを務めてファンベースを拡大した2人は、2022年頃から交流を続けているという。ウルヴェン曰く、彼女がカーペンターに新作のダークなロックの曲へのゲスト参加を依頼する前から、2人はDMでお互いのことを褒め称えていたという。

「彼女から連絡をもらってすぐ、絶対やりたいと思った。一聴しただけで、曲にすごく惹かれたから」とカーペンターは話す。「作業はすごくエキサイティングだった。私の知らない世界を垣間見ることができたから」。


Photo by Thea Traff for Rolling Stone
SWEATER, SHIRT AND SHOES BY CELINE BY HEDI SLIMANE. JEANS BY ACNE STUDIOS

どこか不吉でエコーが鳴り響く「Ugly Side」はウルヴェンの真骨頂だ。「キュートさ」と「愛らしさ」と「煮えたぎるような思い」の間で激しく揺れ動く自分自身と格闘する同曲は、まるでジキルとハイドだ。

様々な局面で、彼女は二頂対立を経験している。ニューヨーク・ファッション・ウィークでのTory Burch、Khaite、Eckhaus Lattaといったヒップなデザイナーのショーに出席することに居心地の悪さを覚える一方で(「服に関しては、私はごく普通の女の子だから」と彼女は言う)、彼女は表題曲でこう宣言している。“私の巨大なエゴがこう言ってる/99年生まれの私のセンスは文句なしに完璧!“。

「気分がすごくアガることもあれば、とことん落ち込むこともある」。ウェイターが食器を下げるなか、彼女はそう語った。「それって悪いことじゃないのかもしれない。自分を特定してしまいたくない。自分に疑念を抱いたりしない自信家で常にいたいとは思わない。懐疑心は感覚を麻痺させることもあるけど、すごくポジティブに作用することもあるから」。

わずかな沈黙を挟んでから、彼女はこう続けた。「リラックスしろってことだよね。それが今の私に一番必要なことだと思う」。どんな物事にも、最初の一歩は必ず存在するのだ。

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From Rolling Stone US.




ガール・イン・レッド
『I’M DOING IT AGAIN BABY!』
輸入盤&配信アルバム:2024年4月12日(金)発売
再生・購入:https://GirlInRedJP.lnk.to/imdoingitagainbabyRS
※国内盤発売日:2024年7月発売予定

FUJI ROCK FESTIVAL'24
2024年7月26日(金)27日(土)28日(日)新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※ガール・イン・レッドは7月27日(土)出演
フジロック公式サイト:https://www.fujirockfestival.com/

Translated by Masaaki Yoshida

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