ジャングルが語る、ベッドルームから生まれた音楽で成功を掴むまで

「イメージ」よりも「音楽」を大切にしたい

ージャングルとして世に出ていこうってなった時、どういう打ち出しを考えました? ダンス・ミュージックのデュオでいうと、ケミカル・ブラザーズ、ダフト・パンクのイメージが強いですよね。いろいろ考えた結果、最初は顔を出さないでミステリアスな存在として打ち出したのですか?

自分たち個人よりも音楽、アートそのものを前面に出したいと思ったんだ。それはある意味、当時ネット上で起こってたことに対する反動でもあった。2013年、2014年というとInstagramが影響力を持ち始めた時期だった。アーティストにしても音楽そのものよりも、イメージの方を重視するようになっていった。だから僕たちは自分たちが何者とか、見た目がどうとかで判断されたくないという、意識的な決断をしたんだ。それよりも自分たちの作る音楽、MVで判断してもらいたい。自分たちが一番大切にしてるのは音楽だから、オーディエンスにも一番大切なのは音楽だと思ってほしかったんだ。

ーイギリスのダンス・ミュージックは昔からどんどん新しいものが生まれて、新しい流れが出てきますよね。いろいろなバックグラウンドがあった上で、音楽的にはどういう風に新しい打ち出しをしていこうと考えました? 

一番大切なのは、自分たちのハートとソウルから出てくるものだと思うんだ。もちろん昔のソウルのレコードは大好きだし、昔のレコーディングでマイクがとらえたボーカルの響きも大好きだ。僕たちはモダンでコンテンポラリーな音楽を作りたかったけれど、同時に、トラディショナルに聴こえるサウンドの音楽も作りたかった。コンピューターと最新のテクノロジーを使うことで、モダンでエレクトロニックだけれど、自分たちのルーツでもあるブルース、ソウル、ジャズ、ファンク、ディスコ、ヒップホップも取り入れたかった。あと、そこに大好きなボーカル・ハーモニーも入れたかった。クロスビー・スティルス&ナッシュとかビーチ・ボーイズも好きだったからね。だからいろいろな影響が僕たちの音楽には入ってると思う。昔のレコードの持つフィーリングを21世紀に甦らせたかったというのも大きいね。

ーそう言えば、『For Ever』のために作ったプレイリストの中に、ビーチ・ボーイズの曲「’Til I Die」がありましたね。

名曲だからね。ダークなビーチ・ボーイズが好きなんだ。ビーチ・ボーイズはあまりハッピーじゃない方がいい(笑)。



ーゲームミュージックからの影響もありますか?

あるよ。僕たち世代の最高のゲームミュージックのサウンドトラックは『グランド・セフト・オートV』だからね。ちょうど僕たちが1stアルバムを作ってる時にあのゲームは発売になったんだ。『グランド・セフト・オートV』にはJ・ディラの音楽もあるし、ゲームの中にはジャイルス・ピーターソンのラジオ局もあった。ジャイルス・ピーターソンに関しては、コンピレーション『Worldwide』から影響を受けてるよ。あれだけのスケール感のビデオゲームで、いろいろなイマジネーションが集まって一つの世界を作ってるわけだから、ものスゴいインスピレーションを受けたね。だからジャングルをやる時も、ファンがその世界に入りたいと思うような世界観を作りたいと思ったんだ。

ーだからジャングルの音楽は単なる音楽ではなく、ビジュアルもカルチャーも含めた世界を形作っているわけですね。それはMVでもそうですし、ライブの見せ方でもそうですよね。

それが本質的に僕たちのやりたいことだからね。僕たち個人が表に出なければ出ないほど、もっとクレイジーなことができるから。

ー「Back On 74」にしても、音楽だけでなく、映像、コリオグラフィ、ダンスのスキル、衣装、照明とすべてのアートが入って、一つの世界を作っていますよね。どのようにアイデアを形にしていったのですか?

楽曲と映像の結びつきは大好きだから、今回はアルバム『VOLCANO』全曲通しての映像を作ってみたんだ。正直、「Back On 74」はあそこまで大きな反響をもらえるとは思ってなくて。アルバムを作った時も、「Candle Flame (featuring Erick the Architect)」とか「I’ve Been In Love (featuring Channel Tres)」の方が、もっと受けそうな、外に向かうエネルギーがあると思ってたぐらいだ。だけどオーディエンスが求めてるものは「Back On 74」だったんだよね。





ー「Back On 74」はどのように生まれたのですか?

4月22日にLAの家の中で生まれた。ツアーを終えてちょっと休みを取ってた時だ。家の中で楽しい時間を過ごしてる時に曲を作ったんだ。そういう時が一番純粋なアイデアが生まれるからね。大きなスタジオで制作する時のようなプレッシャーもないし、自然な環境でごく自然に曲を作るわけだから、自分たちの素直な気持ちが曲に出たんだと思う。

ー「Back On 74」はFull Crateによるリミックスも出していますよね。レイドバックしていて、また違うカッコ良さがありました。

いいよね。あれはFull CrateがTikTok用に作ったものなんだ。それを僕たちに送ってきたから、限定盤のヴァイナルで出すことにしたんだ。



ージャマイカのリディムも感じさせますね。

素晴らしいよね。バックビートがレゲエのダブプレートみたいだから。僕たちが作ったリミックスではないけれど、曲にあったメロディとフィーリングはちゃんと受け継がれてると思う。

ーちなみに、ヒップホップ、レゲエからはどのような影響を受けましたか?

キッズの時はヒップホップをずっと聴いてたし、J・ディラ、マッドヴィランは大好きだった。新しい音楽の中に昔の曲のサンプリングが入って、ノスタルジアを感じさせるところは、僕たちの大好物なんだ。そういうスタイルを持ったヒップホップ・カルチャーがモダン・ミュージックに与えた影響には多大なものがあるよ。レゲエに関しては、僕が生まれ育ったのがロンドンでも黒人の多いエリアだったというのが大きいね。学校に行く途中のお店でもレゲエはかかってたし、レコード屋にもレゲエのレコードが置かれてた。それで、ジャマイカ音楽、カリブ音楽は常に僕たちにとってのレファレンスになったんだ。

ー今後の予定は?

新曲はいつだって発表したいと思ってる。ただ、今はツアーで忙しいから、そこに集中していたい。新曲を出すよりも、今のアルバムをもっと浸透させていきたいんだ。



<INFORMATION>

JUNGLE
5月27日(月)東京・Shibuya Spotify O-EAST
SUPPORT ACT どんぐりず(DONGURIZU)
OPEN 18:00 / START 19:00
TICKET: オールスタンディング¥7,300(税込/別途1ドリンク)
https://www.creativeman.co.jp/event/jungle/

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