80年代末に異彩を放ったバンド・千年コメッツの謎、高鍋千年とハリー吉田が語る再結成

高鍋千年(千年コメッツ)

千年コメッツをご存じだろうか? 様々なバンドが華やかに活躍していた1987年にCBS SONYからメジャーデビュー、4枚のシングルと3枚のアルバムを残して、わずか3年ほどで活動を終えたロックバンドだ。甘く妖艶なビジュアルと透き通る歌声で魅了するボーカリスト・高鍋千年を中心に、カルメンマキ&OZの強力なリズム隊・川上シゲ(Ba)と武田チャッピー治(Ds)、ライブシーンで注目を集めていたギタリスト長井CHIE(Gt)、マルチな鍵盤奏者・海老ヨシヒロ(Key)という腕利きのミュージシャンによる楽曲は、先鋭的なサウンドと美麗なメロディ、歌謡ロックテイストもある歌詞が特徴的で、ビート・バンド全盛の時代にあって、かなり異彩を放っていた。

その千年コメッツが、長い時を経て今年3月にライブを行いまさかの再結成。さらに7⽉12⽇(金)、渋⾕ duo MUSIC EXCHANGEでワンマンライブ〈千年COMETS  復活祭 第⼀章〉を行う。今回、再結成の主役ともいえる高鍋と、デビューから解散までソニーのディレクターとして彼らの音楽を手掛けていたハリー吉田氏にインタビューを行い、楽曲以上に神秘的で謎めいていた彼らの存在を明らかにすべく迫った。

―千年コメッツが〈奇跡の復活前夜祭〉として2023年3⽉31⽇に原宿クロコダイルで再結成ライブを行ったのは、オリジナルメンバーの川上シゲさん、武田チャッピー治さんがSNARE COVERさんと交流を始めたことがきっかけになったそうですね。その時点で高鍋さんは音楽活動はしていなかったのでしょうか。

高鍋:自分が今住んでいる福岡で音楽仲間と趣味程度の形ではやっていたんですが、所謂レコードやCDを作ったりする目的での活動は、もう30年ぐらいは離れています。千年コメッツはアルバムを4枚(ソロ名義を含めて)作ってリリースしたんですけど、正直言うとビジネス的な成功は期待にそえるほどなかったので、自分的にもどこかでけじめをつけなくちゃいけないっていうか、ある種の絶望とは言いませんけど、「僕は音楽の世界の中では必要とはされてないのかな」という気持ちもあって離れたんです。音楽にずっと携わりながら生きていくっていうやり方もあったんだと思うんですけど、ちょっと冷静になって自分の生き方とか、これから先のことを一旦クリアにして、「何か次の人生を」というふうに考えてしまったんですよね。ただ、やっぱり音楽は好きでしたから、アマチュアのバンド活動もやっていて、たまたま去年の7月に、シゲさんとチャッピーさんがSNARE COVERさんのサポートをやってるということで、「よかったら1曲歌いに来ない?」っていう話をいただいたんです。自分では、「千年コメッツのメンバーの人たちとやることはもうないだろうな」と思っていたんですけど、そういうきっかけを作ってもらったので、たまにはそういうのも面白くて良いかなと思って行ってみたら、意外や意外、結構盛り上がったというか(笑)。

―お客さんはもちろん、高鍋さんご自身も盛り上がったわけですね。

高鍋:楽しかったですね。シゲさんとチャッピーさんっていう、やっぱり強力なリズム隊の2人ですから。いろいろ思い出したり感じるものがありました。それから話がトントン拍子に進んで行ったというか、「もう1回やってみたら?」って後押ししてくれる人もいて。中でもハリーさんがそう言ってくれる一番手だったんですけど、改めてライブをやろうということで始めたというのが経緯です。

―ハリーさんは、どのような形で今回の再結成に関わることになったのでしょうか。

ハリー:個人的には、(高鍋は)ディレクター人生で初めて手掛けた人で、非常に思い入れが深かったんです。千年コメッツは確かにそんなに成功したとはいえないまま終わってしまったんですけども、心にモヤモヤしたものはあって、「やっぱりまた千年コメッツをやりたいな」という気持ちは持っていたんです。それで、2023年7月30日に二子玉川GeminiTheatreで開催されたSNARE COVERのライブイベントに高鍋を呼ぼうということになって。音楽をやってるかどうかもわからなかったんですが、声をかけたらきてくれて、リハーサルで合わせたら声もちゃんと出てましたし、これはきっとそういう心構えがあったんだなって瞬間的に思いました。そのときはセッションで2曲だけだったんですけども、SNARE COVERはちょっと高鍋に近い感覚を持っているアーティストなんですよね。そういう思いもあって、シゲとチャッピーがSNARE COVERにハマってやってくれたっていう流れを、偶然というより僕が意図的に導いたところもありました。それで今回の再結成に繋がったんですけど、結成して40年でメンバーが全員元気にしているって、結構珍しいことなんですよね。しかも音楽的にも、ただ懐かしいということではなくて、今聴いてもまったく色あせることなく、むしろ新鮮に聴こえる曲が多いので、「千年コメッツをやりたい」という気持ちが抑えられなくて。高鍋のバンドなので彼の気持ちが大事だとは思っていたんですけど、高鍋もテンションが上がって、しっかりとバンドに向き合ってくれたんです。それで、いろんな人たちの力を借りて、今回の再結成に至りました。

Rolling Stone Japan 編集部

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