『パープル・レイン』にまつわるクレイジーな10の逸話




8. コンピューター・ブルー
スタジオ・エンジニアのスーザン・ロジャーズが、『レッツ・ゴー・クレイジー』のギター・オーヴァーダビングに端を発した、プリンスとのプロとしての親密な関係性について語っている。「私がテープレコーダーを回し、彼がギターソロを演奏していました。彼は私の正面に立って演奏し、私がそれを録音して、巻き戻したら終わりのはずでした。ところが彼がミスをしたんです。だから私は、ソロが始まる頭まで巻き戻ししました。でも彼は、今やったばかりのソロにあわせて演奏を続けています。私は思いました。あれ、彼が演奏しているのに、私は録音ボタンを押していない。間違えてしまったかな? 何か合図を見落とした? だから私は、人差し指で録音ボタンを押しました。すると彼が手を伸ばしてきて停止ボタンを押し、こう言ったのです。"誰も合図を出していないだろ"。私は"そうですよね、すみません"と答えました。彼は辛抱強く思いやりをもってこう言いました。"巻き戻したら、僕を見ていて。ちゃんと合図は出すから"。私は"わかりました"と答え、そんな風に連日の録音を続けました。

それが私と彼とのパートナーシップの始まりでした。私は彼の表情を読むようになりました。エンジニアには、彼のかすかな合図に注意しながら、文字通り彼と一緒にソロで演奏することが求められました。彼のアゴがわずかに動くと、私は"来た!次の最初の1拍だな"と思って録音を開始しました。やがて私は、予想ができるほどに彼のことをよく知るようになっていきました。「ふむ、彼はこのパートを録音したがるだろうな」という風に。あんなに近い距離で頻繁に、ほとんど毎日のように仕事をしていると、エンジニアとアーティストの間にも、美しい共生関係が築かれるものです




9. ディリリアス


1984年7月26日の『パープル・レイン』のワールドプレミア出席者。エディ・マーフィー、ジョン・メレンキャンプ、KISS、ピーウィー・ハーマン、トーキング・ヘッズ、リトル・リチャード、ライオネル・リッチー。傑作だったのはMTVで放送されたアフター・パーティでの"ウィアード・アル"ヤンコヴィックのセリフだ。「プリンスがすごい役者だとは知っていたが、まさか歌えるとはね」



10. ストレインジ・リレイションシップ


スザンナ・メルヴォワン、プリンス本人と彼が演じた”ザ・キッド”の違いについて、また、ファンの論争の種となった、作品と現実とのかい離について。「作品はまさにあいまいで、なぞで、虚構で、そして現実そのものだった。私たち内部の人間にとってもね」

Translation by Kuniaki Takahashi

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