ニール・ヤング、新作映画や自身の配信サイトについて語る:引退ツアーは「くだらない」

新作映画『パラドックス(原題:Paradox)』について語ったニール・ヤング

ニール・ヤングは、同世代が引退を表明する中、相変わらず活発な様子で野心的なアーカイヴ・サイト、シュールな映画とSF小説について語った。

ニール・ヤングの記事を書こうと企画したとき、ニール・ヤングが書く記事に自分が登場することなど期待しない方がいい。「今日の話を、今、タイム・コントラリアンに書いているところだ」と、ヤングがローリングストーン誌に教えてくれた。このタイム・コントラリアンとは、1963年以降の未発表マテリアルを集めたウェブサイトNeil Young Archivesの新聞コーナーで、スタート以来、彼自身がアップデートを続けている。

ヤングは今、一日中インタビューを受けていて、一つ終わるごとに別室に走って行き、感想を手早く書き留めている。
「インタビューを記録しているのさ」とヤング。「朝から夜まで、すべてのインタビューを、誰と話したかとか、覚えている限り全部な。もちろん、もう日暮れが近づいているから、俺の記憶力もかなり疲れているけど、これを読めば朝から夜への流れがよくわかる。ジャーナリズムの練習さ」と。

しかし、ヤングのキャリアから何か学ぶことがあるとするなら、“予測できないという事実を予測する”ことだ。彼のパートナーであるダリル・ハンナが脚本・監督の新作映画『パラドックス(原題:Paradox)』も例外ではない。この作品は3月15日にサウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)でプレミア上映され、3月24日からNetflixで公開される。主演のヤングの役どころは「黒い帽子の男」で、お尋ね者たちで結成したバンドのリーダー。このバンド・メンバーには現実世界でヤングのバックバンドを務めるルーカス・ニルソン&プロミス・オブ・ザ・リアルも含まれており、彼らは“種が貨幣となってしまった世界”で暮らしているという設定だ(ウィリー・ネルソンもカメオ出演している)。

この映画のストーリーは、ヤングが1982年に作った奇っ怪なアルバム『トランス』に匹敵するユニークさかもしれないが、最高の音楽が続けざまに登場する。その中には、ヤングがフィンガーピッキングで演奏する「ポカホンタス」や、プロミス・オブ・ザ・リアルがワイルドにカバーした2016年の「ピース・トレイル」などがある。ハンナはこの映画はあっという間に完成したと言う。2016年にロッキー山脈でコンサートを行ったとき、ヤングとプロミス・オブ・ザ・リアルは環境に慣れるために、コンサート前の数日間、山中で過ごさなければならなかった。「彼らがキャンプファイヤーを囲んで歌ったり、冗談を言い合ったりするのは目に見えていたの。でもドキュメンタリーを作ろうとは思わなかった」とハンナ。「彼らはおふざけ大好きで明るいから、ちょっとした映画を作ると面白いと考えたわけ。ツアーのクルーとメンバーを出演者にしてね。プロの役者も、撮影クルーも、予算もなくて、撮影期間は3日間だけだった。ぶっつけ本番で、その場で起きたことを撮影したのよ」

ヤングは映画が公開されることをとても喜んでいるが、この映画は一定の人にしかアピールしないことも理解しているようだ。「みんながみんな気に入るとは思っていないよ」とヤング。「ただ、少し緊張している。だって、俺たちがスクリーンに映し出されて、みんながそれを見るわけだ。Facebookと同じさ。金切り声を上げる人もいるだろうし、トマトを投げつける人もいるだろうし、セックス・ライフを語る人もいるだろうし……みんなの反応がどんなもんか、誰にもわからないわけだ。俺たちには似つかわしくない場所だよ。でも問題ないさ」

ー『パラドック』制作中、楽しかったことは何ですか?

そりゃあ、全部だよ。雪の中で撮影したシーンは楽しかったよ。犬ぞりに乗るのも初めてだった。何の違和感もなくて、思いつきで犬ぞりに乗ったら犬が普通に走ったのさ。本当に楽しかったね。あと、音楽のシーンは全部最高だよ。バンドの連中と一緒にキャンプファイヤーを囲むシーンもお気に入りさ。

ーセリフには吹き出してしまうものもあります。例えば「愛はオナラのようなものだ。無理やり出そうとすればウンコも出てしまう」とか。

全部ダリルが書いたんだよ。それに衣装も全部、彼女がリサイクルショップで買ってきた。全部彼女が一人でやったんだ。ほんと、驚かされたし、プロの映画製作者だよ、ダリルは。製作費は125,000ドル(約1,300万円)だった。

ー本気で演じることもできたでしょうが、そうしなかったことが逆に良かったと思います。

ああ、本気で演じるようなものじゃなかったからね。俺たちがやりたかったのがあれさ。勘違いしているヤツはゼロだからね。演技なんて俺らには関係ない。真剣な演技ならセシル・B・デミルやイーストウッドに任せときゃいいんだよ。彼らが出る映画は素晴らしいし、それが彼らの仕事だし、彼らが得意なことなんだよ。俺たちはこっち。この映画は俺たちのことが好きな人たちのために作っている。みんなを感心させようなんて思っちゃいない。

ープロとしてダリルと仕事をして、どんなことを学びましたか?

ダリルのことは本当に尊敬しているんだ。疲れ知らずの働き者だし、彼女ほどハードに働く人はめったにいない。彼女のファンが全員この映画を理解できるとは彼女自身も思っていなから、それが少し心配のようだけど、彼女は芸術を愛しているし、本物のアーティストなんだよ。この映画は彼女あってこそだ。彼女だから完成したんだよ。

ープロミス・オブ・ザ・リアルが演奏する「ピース・トレイル」が非常に素晴らしいです。あなたは多作すぎて、「ピース・トレイル」のような素敵な曲がついつい見過ごされてしまうきらいがあります。

あれはいい演奏だよね。実は、あのとき、プロミス・オブ・ザ・リアルは生まれて初めてあの曲をプレイしたんだ。(ドラマーのジム・)ケルトナー、(ベーシストの)ポール・ブッシュネルとレコーディングした「ピース・トレイル」は、レコードで彼らも聴いてはいた。ポールは本当に素晴らしいベーシストで、レコーデイングは非常に楽しかった。ただ、プロミス・オブ・ザ・リアルのメンバーはレコーディング現場にはいなかった。彼らには俺のツアーでバックを務めてもらったし、俺は彼らとプレイしたかった。あのとき、連中は「うわっ、ニールはやると言ったら何が何でもやる男だ」と気付いたと思う。だって、俺はそうやって数々の作品を作ってきたから。俺は待たない。思い立ったが吉日さ。「これは贈り物だ。受け取らなきゃ。これを使って、前に進むぞ」ってね。彼らと一緒にレコードを作っていたら素晴らしい作品になっていただろうから、ある意味で残念だけど、『ピース・トレイル』も素晴らしい作品だよ。

Translated by Miki Nakayama

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