米HBOが起用した「セックスシーン専門コーディネーター」のお仕事

HBOのドラマ「DEUCE/ポルノストリート in NY」のセットにて。キャンディ役を演じるマギー・ギレンホール。(Photo by Paul Schiraldi/HBO)



ローディスが言うには、これまで話を聞いてきた人々の多くは稚拙な作りのセックスシーンのせいで非常に不快な思いをした、という恐怖体験を語るそうだ。「『2年前のセットでの出来事を受け入れて生きていかないといけない』と言う俳優もいれば、『決して忘れられない光景を見てしまった。そのせいで1週間ずっと眠れないこともある』と一見健康そうな人が言う場合もあります」。「DEUCE」のような立派なセットでも、様々な制約にも関わらず、俳優たちを突き動かしてしまう力の不均衡があるとローディスは指摘する。

だからこそ、ローディスは身体の動かし方や身体を守ることだけでなく、セットでの性的な行為に関する人々の発言にも注意を払っている。「たとえば、監督が『そうだよ、相手のオッパイをつかめばいいんだ』と言ったとしましょう。それと同時に監督は『うーん、今は仕事中だからとにかくファックしろとは言えないし、代わりに今日のアグレッシブな動きをどうやって一緒に作っていけるか話し合おう、とでも言ってみるか』となった場合、私が監督の言葉を再構築して、身体の動きを指導します」。

一見すると些細なことのように思えるこうした指示は、シリーズものを撮影する際には必要不可欠だ。映画の場合、セックスシーンの撮影があれば何週間も前から連絡が入るので、精神的、感情的、そして身体的にも準備をするには十分な時間がある、とミードは言う。しかし、TV番組の制作期間はもっと短い。そのため、撮影のたった24時間前に俳優がセックスシーンの存在を知ることも多々あるのだ。ローディスから変更の連絡を受け、撮影への取り組み方を指導してもらえることでずっと落ち着いて撮影に挑めるとミードは言う。

だからと言って「DEUCE」のような作品のセックスシーンが減ったり、より衛生的なものになったり、つまらなくなったりするようなことはない。俳優たちが受け入れて生きていくことができる、入念に遂行されたストーリーが生まれるのだ。

「私の役割は、俳優の代わりに発言することです。とくに、自分には意見を言う権利がないと思っている人の役に立ちたいのです。セットが可能な限り安全な場所になるよう、プロデューサーにも手を貸します。MeToo運動から1年が経ったのに、ブレット・キャバノーは今も米連邦最高裁判所判事ですし、ドナルド・トランプはまだ大統領の座にいます。私たちの文化には、まだまだ改革の余地はあります」とローディスは言った。

Translated by Shoko Natori

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