TOTOが1982年にリリースした大ヒット曲「アフリカ」は、現実世界のアフリカ大陸とは無関係で、この世に存在しないアフリカを描いたものだ。それなのに、この曲は今日のアメリカの縮図となっている。
そして、それが今になってこの曲の存在感を大きくしているのだ。TOTOのドラマー、故ジェフ・ポーカロが「白人の少年がアフリカについての曲を作ろうとする場合、彼は一度も彼の地に訪れたことがないから、結局はTVや過去に何かで見聞きしたもので作るしかない」と言った通り、ヴォーカリストは自分の内側の感情に酔いしれていて、自分がどこにいるのか気付かないのだ。
だからこそ、「セレンゲティの上にオリンポスのようにキリマンジャロがそびえ立つ」という歌詞で、ヴォーカリストは「なあ、見てみろよ、ここに山があったぞ」と無知をさらけ出す。あえて言うまでもないが、セレンゲティからキリマンジャロは見えない。300〜400キロ離れているのだから。でも、そんなことは問題じゃない。TOTOの「アフリカ」は架空のアフリカを歌っているのだ。
ウィーザーが最近、数年ぶりにホット100のヒット曲を出したが、これが驚くなかれ、「アフリカ」のカバーだ。オンラインで多くのファンが懇願したため、彼らはその願いに応えたのである。これを受けてTOTOは9月のライブでウィーザーの「ハッシュ・パイプ」を演奏して恩返しした。
「彼らが生まれるずっと前にハシシを吸っていた頃から、俺たちがやるべきなのはあれだって知っていたよ」と、ギタリストのスティーヴ・ルカサーがステージで言った。「これがウィーザーに対する俺たちの賛辞だ。彼らに神の祝福があることを祈る」と。ここ何年もルカサーはリンゴ・スターのオールスター・バンドでプレイしてきた。ということは、ライブのたびにリンゴが「アフリカ」を叩くわけだ。21世紀のリンゴが毎晩「アフリカ」をプレイするなんて予想したビートルズ・ファンがいただろうか? 「オクトパス・ガーデン」じゃなくて「アフリカ」だ。
なぜかアメリカ文化の奇妙な歴史すべてがこの曲に集約されているようだ。MJの「スリラー」のバックを務めたプロのスタジオ・ミュージシャンで結成されたのがTOTOである。言うまでもなく、ボズ・スキャッグスからスティーリー・ダンまで、数多くのロック・クラシック曲でプレイしてきた彼らだからこそ、「アフリカ」には彼らがそれまで培ってきたすべてのグルーヴが詰め込まれた。