OGRE YOU ASSHOLE×コナン・モカシン対談:両者の考える「サイケデリック」

─ところで、コナンもオウガもその音楽性を「サイケデリック」と言われることが多いと思うのですけど……。

コナン:Wikipediaには「サイケデリック」なんて書かれているけど、2010年に作ったデビュー作『フォーエヴァー・ドルフィン・ラヴ』が、僕の中では最もサイケっぽい内容だったんじゃないかなと思ってる。

そうなったのには理由があって。若い頃に一時ロンドンに住んでいたんだけど、そこのシーンに馴染まなくてニュージーランドに戻ったんだ。そうしたら母親が「自分のためのソロアルバムを、自分のためだけに作りなさい」って助言してくれて。おかげでものすごく楽しみながら、実験的なことをたくさん出来たんだよね。今までやったことないことも沢山試した。それが1stアルバムだったんだ。



─じゃあコナンにとって、今までで最も「サイケデリックな経験」というと?

コナン:実は幽霊的なものを見たことがある。自分でも何が起きてるのか、あれが一体なんだったのかよく分からないし上手く説明できないのだけど、すごく怖かったけど面白くもあって。そこはレコーディングをやっている廃屋みたいな場所で、レコーディングするにはすごくいい環境だったんだよね。ただ、窓はカッチリ閉まっていたから風は入ってこないはずなのに、いきなりドアが閉まったり、どこからともなく物音がしたり、壁に掛けてあった鏡が落ちてきたこともあってね(笑)。

─そういえば、オウガの「ヘッドライト」という楽曲のPVは、家の中の家具が勝手に動き出したり、壁にかけてあった写真が落ちてきたり。ポルターガイスト現象みたいなことが起きる内容でした。

コナン:そう、まさにそれ。あと僕には兄と弟がいるのだけど、子供の時にちょっとしたイタズラをしてさ。小型のレコーダーを、家の中の色んなところに仕掛けて録音してたんだ。あとで聞き返してみたら、「急に人の声が聞こえる!」みたいなことはないかな?ってさ(笑)。それで、ちょっとした物音が入っていただけで大騒ぎしてたら、それを聞きつけた教会から「お宅を除霊します」なんて手紙が来ちゃって母親に怒られたことがあったな(笑)。



出戸:僕はそういう神秘体験のようなものはないんですけど、最近はみんなが「お金」や「国」を信じてるとか、そういうことが神秘的というか、不思議だなあって思いますね。奇妙といってもいいと思うんですけど。

─貨幣価値も国家も、「信用」という担保があって成り立っているだけで、実際は存在していないですもんね。ユヴァル・ノア・ハラリも著書『サピエンス全史』で、人は「虚構」という概念を生み出したことで、国家、法律、貨幣、宗教といった「想像上の秩序」が成立したと語っています。人間だけができる能力というか。

出戸:そうなんです。その「虚無」に神秘を感じるんですよね。

コナン:うん、それはすごく面白いね。電子マネーとかオンライン決済とか「虚構」としか思えないよね。

─出戸さんのそういう視点が、オウガのようなサウンドを生み出していると思います?

出戸:さっきコナンが、自分にとって楽しいと思える音楽を作ったら、サイケデリックと言われる1stが生まれたって言ってたけど、そのスタンスは僕らも同じところがあって。自分たちが面白いと思うことを追求しながらレコーディングしていった結果が今のサウンドなんですよね。結果的にそれが、他の人にとっては「サイケデリック」なものになっていたという(笑)。サイケデリックを目指してそうなったわけでは決してない。

コナン:同感だよ。割と最近「サイケ」という言葉を安易に使いすぎな気がするよね。よく「サイケデリック・ポップ」っていうけどさ、ポップだったらサイケなわけがないし、サイケだったらポップなわけがない。ポップっていうのはレディ・ガガみたいな音楽だろ? だから矛盾した言葉なんだよ、「サイケデリック・ポップ」というのは。なんか「サイケデリック」が何かすらよく分からなくなってくる(笑)。

出戸:ポップというのもよく分からないですよね。

コナン:僕の定義ではポップっていうのは文字通り「ポピュラーな音楽」ということだと思うんだよね。何百万人に支持される音楽。

─例えば、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は?

コナン:そうか、じゃああれが唯一の「サイケデリック・ポップ」だ(笑)。

Translated by Kana Tsuji

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