チャーリー・ブリスが語るポップの真髄「惨めな体験をしても自分を信じること」

―前作に引き続きミュージックビデオがユニークで、みなさんの演技力にも驚いています。今作で特に気に入ってるMVは?

エヴァ:どれかひとつを選ぶのは難しい! どのビデオも期待以上の仕上がりだったから、全部すごく気に入ってるの! でもどうしても選ぶ必要があるなら、個人的に紹介したいのは「Chatroom」かな。実は撮影の時は本当に緊張しちゃって。ダークなドラマの脚本をカメラの前で演じることがはじめてだったから、私にとっては挑戦だったの。監督をしてくれたMaegan Houangは親しい友人のひとりで、彼女の励ましとサポートのおかげでなんとかやり切ることができた。一番難しかったぶん、思い入れの強いものになったの。楽曲の不穏な空気をそのまま捉えながらも、新たな世界を詩的に切り出してくれていて、そこも気に入っているポイント。



―今作の歌詞を通じて伝えたかったテーマを教えてください。

エヴァ:このレコードにおける大きなテーマは「忍耐と希望」。歌詞は性暴力や自己嫌悪に鬱だとか、暗く難しいテーマを多く題材にしてる。だけど人が救いを求めた時、自分と自身の愛する人に対して誠実であれば、どんなに苦しい経験も乗り越えることができるっていうメッセージを込めているの。人生でもっとも辛いと思えるような瞬間をじっと耐え忍んで、事実を受け入れて、そこから学ぶことができたなら、本当に強くなることができる。私も自分が体験したことを乗り越えるまでの間、ずっと溺れているような感じがしていて。ちょっとでも前に進んでいるとは思えない瞬間がたくさんあったし、そう簡単にうまくはいかないけれど、どん底から這い上がるために必死でもがいて立ち直った自分のことが今すごく誇らしく思える。

―そんなアルバムを『Young Enough』と名付けた理由は?

エヴァ:制作途中の段階からずっと、「Young Enough」がアルバムを代表する楽曲になると感じていたから。曲が出来上がったとき、残りの楽曲をどうしたいか、作品全体のヴィジョンをはっきり掴むことができて、完成を前にこの曲がタイトル・トラックになると思ったの。

私達は歳を重ねるにつれて、困難を避けることができなくなる。人生は本当に苦しくてやっかいなもので、誰もそこからは逃れられない。でも、培ってきた経験をどう活かすかは自分次第。冷たい皮肉屋になってしまうこともあれば、殻を打ち破って自分を輝かせたり、心を開いて人を深く思いやることもできる。それが「Young Enough」という曲、そしてアルバム全体に込めた意味。私はすべての悩みが消えて無くなる魔法みたいな方法を見つけたふりをしたいわけじゃない。でも、このアルバムを作りながら改めて自分の強さを見つけられたことが嬉しかった。たとえどんなに辛く惨めに思える体験をしたとしても、自分自身のことをまだ好きだと思えて、自分に非はないとちゃんと信じられること。それが大切なんだと思う。



―チャーリー・ブリスにとってポップは重要な要素だと思います。「ポップはダサい」という間違った風潮も昔からありますが。

エヴァ:本当にその通りね! 私も高校生の頃、マイリー・サイラスを聴いているってみんなに言うのがちょっと恥ずかしかった時期とかもあったけど、音楽に向き合っているうちにまったくそんな風には思わなくなった。みんなもっと自分に正直になって、ポップ・ミュージックが素晴らしいものだって素直に認めてしまえばいいのにね。ビートルズだってポップ! プリンスも、ウィーザーも、レディー・ガガも、キラーズも、すべてポップなんだもの! 

―そこまで強くポップに惹かれるのはなぜ?

エヴァ:感性をどうやって音として表現するかにはたくさんの方法があるけれど、ポップは真っ直ぐ感情に訴えかけることのできる無尽蔵のフォーマットで、それに強く惹かれるんだと思う。これまでに何十億ものラブソングや失恋ソングが作られてきたのに、いつまでも飽きることなく、新しいものがどんどん生まれていく。歌われていることがまるで直接自分の人生に関わっているような、今起きていることを直接映し出しているかのように感じる曲たちがね。ソングライターとしてそういう曲を書くためには、自分自身と感情を顕微鏡でのぞくみたいに詳しく観察して、発見したことについて正直でいることが大事なんだと思う。それこそが私にとって、追い求める価値があることなの!





チャーリー・ブリス
『Young Enough』
発売中

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