フーファイのテイラー・ホーキンス、スーパースター軍団と描いたロック・ドリーム

8.「Middle Child」 (featuring Dave Grohl)
デイヴ・グロールについては、もういいと思うので、本作のプロデューサーを務め、ほぼ全曲のライティングにも携わっているジョン・ロストウについて触れておこう。フー・ファイターズの作品には2006年の『スキン・アンド・ボーンズ』あたりから関わり続けているロストウは、近年のテイラーのプロジェクトであるバーズ・オブ・サタンや『KOTA』EPも手がけるなど親交を深めており、ライアン・リチャードソン・プラットによるジャケットのイラストレーションにこそ描かれていないものの、ほとんど第4のメンバーと言っていいくらい存在だ。ドリュー・へスターがプロデュースした過去2タイトルから、間を開けた本作での進化の鍵は、おそらくロストウが握っている部分も大きいのではないだろうか。この8曲目のボーカルは、どことなくシン・リジィのフィル・ライノットっぽさを混ぜているように聞こえたりもして面白い。



9.「Kiss The Ring」
9曲目には、特に外部ゲストは参加していないが、冒頭のエレクトロニックなサウンドが新鮮だ。この曲でキーボードを担当しているのは、ガニン・アーノルドに代わってギタリストを務めることになった新メンバーのブレント・ウッズ。セバスチャン・バック(スキッド・ロウ)やヴィンス・ニール(モトリー・クルー)といった人たちのバックも務めてきたブレントは、90年代初め頃にはワイルドサイドというバンドをやっていたこともある。この人もまた才能豊かなミュージシャンのようで、今回ロストウとともに果たした貢献は大きそうだ。



10.「Shapes Of Things」(featuring Roger Taylor, Pat Smear, Steve Jones)
最終曲は、ヤードバーズのカバー。ゲイリー・ムーアによるバージョンもそうだったが、ここで聴けるのも、第1期ジェフ・ベック・グループのアレンジを踏襲している。テイラーのハスキーな声は、ロッド・スチュワートの持ち歌をこなすのにぴったりだ。また、この曲のみガニン・アーノルドがギターを弾いているので、もしかしたら時期的には少し前の録音なのかもしれない。カバーであることも含め、ボーナス・トラック的な位置付けを意識してラストに収録したのだろうか。しかし、ガニンに加え、フー・ファイターズの同僚であるパット・スメア(ジャームス)、およびセックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズによるトリプル・ギター体制で、大先輩ロジャー・テイラーも再び登場するなど、ボーナスには贅沢すぎる豪華さでアルバムはエンディングを迎える。




デイヴ・グロールは、このところ「時代を代表する音楽表現」としては中心的な役割から後退しつつあるロック・ミュージックを、まだまだ燃え上がらせ続けるべく、様々な思慮を巡らせ、幾つもの計画を実行してきた。フー・ファイターズの最新アルバム『コンクリート・アンド・ゴールド』では、ベックやシーアを手がけたポップ畑のプロデューサーであるグレッグ・カースティンを起用してみたり、若い子たちが楽器を学ぶことを奨励する目的で、自ら全パートを演奏した20分の大曲を発表したりした。ドキュメンタリー映画を撮ったこともそうだし、最近では遂にニルヴァーナの楽曲をライヴで演奏したことも、「やれることはなんだってやってやる」という強い意志を感じる。

その一方で、弟分のテイラー・ホーキンスは、そうしたデイヴの行動に触発されながらも、あくまでテイラーらしく無邪気に、自分が大好きなロックを鳴らすことの喜びを全身で体現することで、それをサポートする役割を自然に引き受けているように思えてくるのだ。

テイラーのファン、フー・ファイターズのファンだけでなく、今作のゲストの面々に興味を惹かれたような人も、ぜひテイラーのロック・エンジョイっぷりを分かち合ってほしい。




テイラー・ホーキンス&ザ・コートテイル・ライダーズ

『ゲット・ザ・マネー』
発売中

配信リンク:
https://lnk.to/TaylorHawkinsNEWAL
日本公式サイト:
https://www.sonymusic.co.jp/artist/TaylorHawkins/profile/

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