THE ORAL CIGARETTESが語るバンド哲学「ロックスターの源流を学び、2020年に昇華させた」

THE ORAL CIGARETTES(Photo by Hirohisa Nakano)



ロックスターの本質を知るためにロックの歴史を辿る

―ああ、それは納得がいきます。山中さんはどうでしょう。

山中 ジャンル的にはまず、ポストパンクに目をつけました。あとは、ロックスターってもともとどういうものやったんやろ、その時代に何があったのか辿ろうっていうところから、ブラー、オアシス、ミューズとかいろんなバンドのドキュメンタリーを漁りまくったんですよ。それでその人たちが活躍した時代背景を知ったり、「なるほどね。それでこの音楽を奏でてるのか」とか、「パンクからこの音楽に変化したのはそういうことだったのか。パンク、かっこいいな」みたいにロックの歴史をたどっていって。それで、「じゃあ、今、USのアーティストが何をやってるんだろう」って見てみると、「ああ、めっちゃUKからの流れを食らってるやん。前まであったUSのロックシーンはどこいったんやろう。ああ、ONE OK ROCKがやろうとしてるやん。かっこいいな、ONE OK ROCK」って、勉強すればするほど歴史がつながっていく。



―その感覚、わかります。様々なバンドのドキュメンタリーを観るなかでほかにどういうことが刺激になりましたか。

山中 自分に対する圧倒的な自信があって、世間を巻き込んでいくときの見せ方をわかっている人が多くて、それにしっかり付いていくメンバーがいたり、すべてがちゃんとハマってる感覚が世の中を変えてきたバンドにはあると思いました。

―うんうん。

山中 あと、オアシスと競わされて「テッペンはどっちだ?」とか騒がれたとき、「俺らはどっちが1位だなんて全く考えてないのに、無理やり戦わせて盛り上げようとしてるメディアがクソうざい」みたいな話をブラーがしていて。あそこまでの立場になってもそういう反骨精神を持ち続けられるメンタルの強さのもとはマンパワーにあると思うんです。だから、ファンがアーティストに魅了されるのって、まず前提として音楽があるけれど、やっぱり人なんだなっていうことをすごく感じました。その人の生き様だったり人生が表れるステージングにみんなは惚れると思うし、音楽を追求していくことも大事なことのひとつだけど、それ以前に人間としてどうあるべきなのか、人間としての経験値をどうやって積んでいくのかっていうことのほうが俺はもっと大事なんじゃないかなって思いました。

―たしかにそうですね。

山中 そういう流れを学んだ上で今回、THE ORAL CIGARETTESとして何ができるのか考えたときに、海外に行って活躍してる日本人の先輩方はたくさんいて、自分はそれをリスペクトしてるしカッコいいと思ってる。だけど、俺らがやるべきことは、海外の流れを全部踏まえた上で、誰よりも早く日本で新しい音楽を鳴らすこと、海外から見ても「あいつらイケてんなあ!」って思われるような存在に早くなることだと思ったんですよね。つまり、自分たちの音楽を海外のシーンに順応させていくんじゃなくて、日本という場所自体をカッコよくするのが俺らの仕事なんじゃないかなとすごく感じたんです。

―なるほど。

山中 そう考えるようになったのは88risingの存在も大きくて。あの人たちが現れたおかげでアジアのヒップホップシーンはすごく活性化されたのに、ロックシーンにそういう存在がいないのはおかしくないかって。それで今回のアルバムは、過去に残してもらったものに対してリスペクトを示しつつ、そのサウンドのよさを今のリスナーに伝えられるようなものと、俺らが2020年代にできることを足し算、掛け算してつくりたいと思うようになりました。

―ああ、少しずつ今作の狙いが見えてきました。

山中 あと、今回の作品はゴスペルとかクリスチャンミュージックにハマったことも大きくて。ヒップホップとゴスペルを混ぜたチャンス・ザ・ラッパーが出てきたことが当時、すごく衝撃で、日本のヒップホップにもその流れが絶対来るって前から言ってたんです。そういうこともあって、「DIP-BAP」(2016年7月リリース)はヒップホップのトラックを意識してつくったところがあって。

―そういう流れがあったんですね。

山中 あと、今回は外部の人と初めて手を組んでますけど、それは日本人によくある変な蹴落とし合いの文化がこの国を悪くしてるなと思ったからなんです。フェス競争みたいなものがあるなかで、誰がメインステージに立つのかばかり気にしたり、「あいつ、病気になったんだ。ライブできないじゃん、ラッキー」とか思ってるようなヤツも少なからずいるやろ、みたいな。それじゃあ日本はずっと成長せぇへんなってすごく感じてたんですよね。

―わかります。

山中 だから、いいものはいいって認めて、いろんな人と手を取り合ってひとつの最高の音楽をつくることを考えるのがバンドマンの本来あるべき姿なんじゃないかと感じたから、今回、シンガーのロザリーナをフィーチャーしたりしてるんですよ。そうやっていろんなことを先人から教わって、今の自分たちなりに昇華したのが『SUCK MY WORLD』なのかなと感じてます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE