苦境に立たされたマーチャンダイザーの挑戦「それでもツアービジネスは不可欠」

2017年のグラストンベリー・フェスティバルで、グッズ売り場に列をなすオーディエンス(Photo by Invision/AP/Shutterstock)



小さな企業ほど大きなリスクに晒されている

コンサート開催なくして、グッズ販売業者がどのくらい持ちこたえられるのかは定かでない。コーチェラやSummerfest等のメジャーなフェスティバルやコンサートにおける販売時点管理や在庫調査を担うテック企業、atVenuのCEOを務めるデレク・ボール氏は、いくつかの小規模なマーチャンダイザーや、メジャーレーベル3社のグッズ部門と仕事を共にしている。ボール氏によると、小規模な会社ほどパンデミックによる倒産リスクが高いという。

マーチャンダイザーの中には、既に従業員を一時的に解雇しているところもある。アリソン・クラウス、スティーヴン・タイラー、ミスフィッツ等のグッズ販売を手がけるBandmerchは、本誌の問い合わせに対する自動返信メールによると、政府からのアップデートがあるまで従業員の大半を一時帰休させているという。同社からの正式なコメントは得られていない。

「メジャーレーベルの一部であるマーチャンダイザーは、事態が今後どうなろうとも乗り越えられるでしょう」。ボールはそう話す。「言わずもがな、より小さな企業にはメジャーレーベル3社によるバックアップなどはありません。小さな企業ほど大きなリスクに晒されています。そういった会社の中には、過去15年間に渡ってある大型フェスのグッズ販売に頼ってきたところもあります。その機会が失われた場合、彼らの先行きは当然不透明になります」

ユニバーサルミュージック・グループの一部であるBravadoは、アメリカ国内で最大のマーチャンダイザーの一つだ。CEOのマット・ブラシック氏は、店舗や通販での売上に対するツアーグッズ収入の比重についての問い合わせには回答しなかったが、Bravadoにとってツアーが大きな収入源であることは認めている。感染拡大があと1カ月先であったならば、Bravadoは膨大な量の在庫を抱えていたはずだが、同社はManheadと同様にそういった事態は回避している。

それでも、Bravadoが受けたダメージはゼロではない。例えばビリー・アイリッシュはワールドツアーを開始したばかりだったが、パンデミックによってわずか3公演後にツアーの中断を余儀無くされてしまった。手元に残ったグッズをより建設的に扱う方法について、同社は今後正式にコメントを発表する予定となっている。

ブラシック氏によると、世界最大のレコード会社がバックアップするBravadoは、小規模なマーチャンダイザーが経験しているような深刻な事態を免れることができており、今のところ解雇された従業員は1人もいないという。同社はWe’ve Got You Coveredというイニシアチブを発表し、アーティスト公認のマスク販売による利益をミュージシャンへの支援基金に寄付すると明言した。

ブラシック氏がCEOとなって以来、Bravadoはeコマースビジネスの比重拡大に取り組み続けており、パンデミックはその方向性をさらに推し進めるきっかけとなった。「こういった事態に強くなるにはどうすべきか? 私たちはそういう考え方へとシフトチェンジしつつあります」。ブラシック氏はそう話す。「幸いなことに、当社は過去数年間eコマースビジネスの拡大に取り組んできたため、そういった方向転換はスムーズです。我々のビジネスが影響を受けることは間違いありませんが、この状況から生まれてくる機会もあるはずだという前向きな見方をしています」

Translated by Masaaki Yoshida

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