フィービー・ブリジャーズが語る新境地、The 1975への共感、笑顔と涙のハーモニー

フィービー・ブリジャーズ(Photo by Jessica Lehrman for Rolling Stone)


『Punisher』の制作背景「私はクラシックロックが大嫌い」

『Punisher』の制作にはより長い時間を費やし、レコーディングは2018年の夏から2019年の秋にかけて断続的に行われた。「今から1年後くらいに、このレコードの本当の意味が理解できるんじゃないかって思ってるの」彼女はそう話す。「恋人と別れてから5年くらい経って、『ああ、そういうことだったんだな』って不意に悟るような感じ」

新作はフィービー・ブリジャーズらしさに満ちている。「Savior Complex」は、彼女が夢の中で書いたメロディーを用いた、胸を打つアコースティックな曲だ。一方「Moon Song」では、ロックなサウンドと共に彼女ならではの世界観が描かれる。“私たちは「ティアーズ・イン・ヘヴン」が大嫌い/息子さんが亡くなったことは悲しいけれど”“私たちはジョン・レノンを巡って喧嘩した/私が泣きだすまで”

「基本的に、私はクラシックロックが大嫌いなの」ブリジャーズはそう話す。しかし、いくつかの例外はあるという。「ジョン・レノンは好き」彼女はそう続ける。「ダントツで一番のビートル。エリオット・スミスとかダニエル・ジョンストンとか、私のヒーローたちはみんな彼から影響を受けてるし」


ブリジャーズはThe 1975の新作『仮定法に関する注釈』に、ゲストヴォーカルとして参加している。「成功してもエッジを失わない人って稀だと思うの」彼女は彼らについてそう話す。「彼らはハンサムでイケてるポップスターよ」(Photo by Jessica Lehrman for Rolling Stone)

●The 1975インタビュー「ルールを設けないこと、それが僕たちのルール」

捻りの効いたホリデーソング「Halloween」では、アップライトベースと控えめなシンセをバックに、彼女は遊び心たっぷりにこう歌っている。“でもあなたが本当のことを言ってくれるって信じてる/すっかり酔っ払ってマスクを被ってる時に”。オクターブの上下を行き来する彼女のヴォーカルは、どこか冷淡さを感じさせる。「憂鬱な気分でのホリデーって、ものすごく悲しいと思う」彼女はそう話す。「クリスマスっていうテーマは避けたいの、あまりに使い古されてるから。いつだったか、ハロウィーンを独りで過ごしてた時に、聞こえてくる子供たちの声をボイスメモで録音したの。聴いてみると、何だかすごく奇妙な気分になったのよね」

「Halloween」が生まれた2017年の春頃、彼女はシンガーソングライターのクリスチャン・リー・ハトソンと出会い、2人は親友かつ不可欠なコラボレーター同士となった。「お互いにすごくピンと来たの」彼女はそう話す。「友情っていうのは一番ロマンチックな愛の形だと思う、変に意識する必要がないから」。彼女は彼のアルバム『Beginners』をプロデュースし(彼女にとって初のプロデュースワーク)、その経験は『アルプス』にも参加していたトニー・バーグとイーサン・グルスカと共同で『Punisher』をプロデュースする上で大いに役立つことになった。「彼らは誰よりも私の音楽のことを理解してくれてると思う」彼女は2人についてそう話す。「2人が出す音を聞いてると、それが自分の音なんだって気づくの」

バーグはベテランのセッションギタリスト兼プロデューサーであり、過去にはエイミー・マンやピーター・ガブリエル等のメジャーアーティストとの仕事も経験している。初めての日本滞在中に彼女が書いたバラード「Kyoto」を聴いて、バーグは曲のテンポを上げるべきだと提案した。ホーンやメロトロンを含む多様なサウンドが彩る同曲は、アルバム中最もアップビートな曲となった。「あなたは公衆電話から電話をかけてきた/その町では電話ボックスが今でも使われてる」彼女はそう話す(「あれは完全に空想なの」同ラインについて尋ねられると、彼女は堂々とそう答えた。「ググったりさえもしてないし」)。

●フィービー・ブリジャーズ、昨年来日時のインタビュー



『Punisher』の制作において、彼女はこれまで以上にコラボレーションを重視した。「自由にさせてもらってるの。面白いかもっていうだけで、よく知らない人にタンバリンを叩いてもらったりね」彼女はそう話す。オバーストは2曲でバックコーラスを務めており、バンジョーが印象的なハイライト曲「グレイスランド・トゥ」では、ダッカスとベイカーによる見事なハーモニーを聴くことができる。「2人からはものすごく影響を受けてる」彼女はボーイジーニアスのメンバーについてそう語る。「ジュリアンのシャウトはものすごくクールで、ルーシーの歌はまるで溶けたバターみたいなの。2人は私にとって最高の仲間」

パンデミックは『Punisher』のレコーディングとリリースプランだけでなく、楽曲のタイトルにも影響を及ぼした。「I See You」はもともと「ICU(集中治療室)」と題されていたが、世間の感情に配慮して変更することを決めた。ブリジャーズがいつツアーに出られるのかは定かではないが、今週彼女はロサンゼルスの自宅でバーチャルツアーを開始する予定であり、会場の中には「お風呂場」や「ベッド」も含まれている(同ツアーのアナウンスに伴って公開された映像は、彼女らしい遊び心に満ちている[編注:この記事は2020年5月27日に公開された])。

本物のツアーに出るたびに、彼女はこの上なく情熱的なファンに迎えられる。「私が聴きたいのは、自分がまさに感じていることを正確に切り取ったかのような音楽なの」彼女はそう話す。「そういう曲を聴くたびに、『まさにこれ!』って感動する。私の曲を聴いて、誰かがそういう風に感じてくれたら嬉しいな」




フィービー・ブリジャーズ
『Punisher』
発売中
http://bignothing.net/phoebebridgers.html

Translated by Masaaki Yoshida

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