メイド・イン・ジャパンは誰をエンパワーしたのか? 日本の楽器メーカーがもっと誇るべき話

スヌープ・ドッグとドクター・ドレー。1994年、ニューヨークで撮影(Photo by mark peterson/Corbis via Getty Images)


メイド・イン・ジャパンはデモクラティック

音楽の話からは少し遠ざかりますが、2009年にユニクロとジル・サンダーが提携して新しいライン(+J)をつくった時に、ジル・サンダーが日本で会見を行なったことがありまして、いまだによく覚えてるのですが、「なぜユニクロと組むことにしたのか?」という質問に対して、彼女は「ユニクロの服はデモクラティックな服だと思う」と即答したんですよ。それに結構感動したんですよね。というのも、ユニクロの服って「安いわりにものはいい」っていう認識だったからなんですが、これって、別に自分だけじゃないと思うんです。自分は、その言葉を聞いて、なんでユニクロは自分の口から、それを一度も言ったことがないんだろうって思ったんですよね。

ユニクロが海外で人気の秘密は、実は、それが「デモクラティック」だと認識されているところが大きいんじゃないかと思うんです。というのも、欧米のファッションって基本的に、価格帯がそのまま階級のヒエラルキーに対応していて、本質的には階級格差というものと強く結びついているように思うんですね。ところが、日本人にとって、洋服というものはデモクラシーという概念と同時に入ってきたものなので、洋服を着ることが即、それまでの身分制度からの解放を意味していたわけですよね。なので、ハナから日本の服はデモクラティックであり得たんだろうと思うんです。ジル・サンダーは、それをしれっと「民主的」ということばで価値づけしたわけですが、それが価値であるということは、そのあり方が逆に言えば稀なものだからなんですよね。

ところが、日本人自身はあんまりそのことがわからないんですね。というのも一億総中流を目指して経済成長した国では、クルマも家電もそれこそ洋服も「みんなに行き渡る」ことがおそらくは大事とされてきたからで、そこでは金持ち向けとか貧乏な人向けといったセグメントが存在しないんですよね。そういう設定をすることがはしたないみたいな感覚すらあるような気もします。だから、なんとなく、貧しい人も着るけど、金持ちも着るという状況設定が自明のものとしてあるように思うんですが、これが欧米に行くと、ちょっとした驚きになるわけですよね。

そう考えると洋服に限らず、クルマだって、家電だって、楽器だって、日本のプロダクトは理念的にはずっと「デモクラティック」なものだったのかも知れません。で、実は、海外ではそれが非常にラジカルなメッセージとして届いていた気がします。西洋の根強い既成の価値観みたいなものを、自分たちも気づかないうちに壊していた可能性があって、しかも、そうしたディスラプションが、アフリカの若者までをも勇気づけていたかもしれないわけです。


ヒップホップがいかに求められていたのかを示す写真。観客が待つのはウルトラマグネティック・MCズ。1989年、ロンドンで撮影(Photo by PYMCA/Universal Images Group via Getty Images)

Edited by Toshiya Oguma

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