世界的ヒットメイカーの仕事術とは? ジョシュ・カンビーに学ぶ音楽づくりの最先端

クリエイティヴに活かされた音楽ビジネスの勉強

―トビーのところで働くようになった経緯は?

ジョシュ:トビーとはCraigslistで知り合った。地域の情報サイトっていうのかな。例えば、誰かがソファを手放すとか、中古のピアノを買いたいとか、そんな情報から求人情報まで何でも載ってるんだけど、そこで何となく音楽関係の仕事を探していたら、「グラミー受賞プロデューサーのアシスタント募集」っていうのが見つかって。「絶対にウソでしょ」と思ったんだけど……。

―そうでしょうね(笑)。

ジョシュ:でも、もしかしたらもしかするし、とりあえず履歴書を送ってみた。そうしたら、彼から折り返しのメールが送られてきたんだ。聞き覚えがある名前だったから、すぐにググって「オーマイガー、どうしよう!」となったよ(笑)。そこから4度の面接を経て採用が決まった。以来、彼のファミリーの一員として、何から何まで参加させてもらった。今の僕が知っていることは、ほとんどが彼から教わったことだ。どれだけたくさんの扉を開いてもらったか。



―話が前後しますけど、大学では音楽ビジネスを学んだんですよね?

ジョシュ:うん、ミュージック・インダストリーって名称だったかもしれない。

―そこではどんなことを勉強したんですか?

ジョシュ:大学に入学してオリエンテーリングで学内を回っているうちに、たまたま音楽ビジネス・プログラムの説明会に行き当たって。申込書の提出期限もその日が最終日だったから、そのままそこに提出したっていう。

―またも偶然の成り行き(笑)。

ジョシュ:もちろん音楽が好きだから、その周辺にいたいという気持ちもあったよ。当時は音楽制作で食べていけるとは思えなかったし、音楽絡みで家賃を払えるくらい稼ぐとしたら、ビジネスに関わることぐらいしかないかなと思って、

そこで学んだのは契約等々の法務とマーケティングや会計、資金繰りについて。エンジニアリングや技術関係のクラスもいくつかあったけど、クリエイティブな授業ではなかった。でも、結果的にはそのおかげで、自由な時間によりクリエイティヴな形で音楽に取り組むことができたんだ。ビジネス関係の宿題を家で片付けたあと、夜中の2時ぐらいまで好きな音楽を作っていたことが、今の仕事に繋がっているんだから。

―じゃあ、音楽の創作に関しては独学だった?

ジョシュ:ほぼそうだね。ほら、YouTubeがある世の中では、全てを自分の手柄にしちゃいけないから(笑)。

―YouTube大学ってやつですね。

ジョシュ:まさに。僕も創作に関しては間違いなく、何よりもYouTube仕込みだ。でも一方で、トビーとは昔ながらの師弟関係だし、彼から実地で教わったことの方がYouTubeで学んだことの10倍は大きいよ。彼にくっついて、クリエイティブな人たちと同じ空間にいることができたし、みんな親切に教えてくれた。僕は本当に感謝している。YouTubeにも感謝してるけど(笑)。

―具体的に、トビーとの現場ではどんなことを学んだんですか?

ジョシュ:アシスタントとしての初仕事は、たしかトビーのカタログの整理だった。未発表曲が山のようにあって、それを音楽出版社に売り込む準備として素材の整理をするんだけど、トビーって本当にすごい人たちとコラボレーションしているから。曲もバラエティに富んでいて、たぶんマジで1000曲くらいあったと思う。それを逐一聴いて確認しながらの作業だから、本当に圧倒されたよ。そして、その作業を通じて学んだのは、いわゆるヒット曲がひとつ出るまでには、トビーをしても10とか20とか鳴かず飛ばずの曲があるんだってこと。

―それは大きな発見ですね。そこから徐々に制作にも関わるようになっていった?

ジョシュ:そう。最初はビジネス面の手伝いだったのが、スタジオを手伝うようになり、ディズニーのプロダクションなんかは早くから関わっていたんだ。その後、一緒に曲を書くようにもなって、『Xファクター』のだったり、ラテンのアーティストのだったり……そんな感じで順調に進んで、やがて一緒にマドンナをプロデュースするに至ってようやく、「これはマジだぞ」と思うようになった(笑)。


マイク・タイソンの参加も話題となった、マドンナの楽曲「Iconic」(2015年)にトビー・ガッドと参加

Translated by Kazumi Someya

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