ニューアコが示した新しい価値観と「自由」の味わい方

楽しさを伝える多彩なコンテンツ

来場者を絞ったことにも配慮して特設されたYouTubeの配信チャンネルではTOSHI-LOW自身がニューアコ会場を案内したり、出演アーティストのインタヴビューを行ったり、配信ブースではLOW IQ 01やG-FREAK FACTORY茂木などお馴染みのメンツによるお酒をたしなみつつのトークが展開されていたり、RONZIによる会場近辺の観光スポット紹介が行われたりと(RONZIが温泉に入るセクションはいろんな意味で騒然としていた)、出演者それぞれが飾りっ気ない人柄を見せながらニューアコの楽しさを間口広く伝えるコンテンツも多く用意されていた。

観客はもちろん出演者自身も自然体でいられる場所であること、その自然体を守るための制限を逆手にとってより一層自由なコンテンツにしてしまうアイデアがあること。フィジカルな触れ合いが叶わない状況だとしても、その距離感を埋めることは可能だという想いがあること--本質が一切変わらないまま新しく生まれ変わったニューアコの姿を随所に垣間見られたし、たとえば今年得たノウハウの数々や、今年強めることができた「個々の自治」の意識はそのまま、来年以降の新しい可能性になっていくのだと思う。

そして、実際のライブはどうだったか。たとえば、昨年は「ボツになった曲たち」を交えて大笑いしながらのライヴを行っていたハナレグミ。「去年はボツ曲を演奏しながら緩いライヴをやったんですけど、今年はストレートに演奏していこうと思います」というひと言からSUPER BUTTER DOG時代の楽曲「サヨナラCOLO」を歌い上げるなど、ニューアコ特有の観客との親近感を「楽しいライブ」に繋げるのではなく、音楽を鳴らし音楽を直接的に共有できる場所があることへのありがたみを噛み締めていくようなライブを見せた。

【画像】ソーシャルディスタンスを保つための環境下で実施された今年のニューアコ(写真12点)

EGO-WRAPPIN’はイベントへの感謝を口にしながらも、言葉より音楽で人と対話したいと言わんばかりに矢継ぎ早に歌を繰り出していく。アコースティックアレンジによってじっくりとした歌唱へ変貌し、それによってむしろ中納が歌に没入していく際の凄みが際立っていた。MONOEYESは、観客と共に歌うことが制限されようとも、音楽によって生まれる内側の熱を共有することは可能だと伝えるように、細美がステージの際まで乗り出してくるアグレッシヴなアクトとなった。「Borders & Walls」では、「レッツゴー!」に合わせ歓声の代わりに拳とバンザイが原っぱいっぱいに広がり、大人から子供まで全員が、歌を歌わずとも歌と一体化していく光景が感動的だった。

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