ニューアコが示した新しい価値観と「自由」の味わい方

TOSHI-LOWがライブで語ったこと

さらにTOSHI-LOW曰く「ニューアコの真の王様」であるLOW IQ 01は、初っ端からTOSHI-LOWを呼び込み、自身の楽曲を聴かせることよりも、誰かと音楽を通じて繋がり、戯れ、遊んで大笑いする様を見せることで観客それぞれの笑顔を引っ張り出していった。観客の前でライヴをすることが制限され、音楽を表現することが縛られた時期を経たことで、出演者それぞれにとっての音楽の在り方、歌への気持ちが改めてピュアに表出するようになったというか。それぞれにとって、人と音楽を共有することの意味がライブの中で発見されていったというか。そんなアクトの数々を目撃し続けることとなった。何より、OAUのライヴでTOSHI-LOWが語ったことがそのすべてを表していたと言ってもいいだろう。

「このイベントをやれないことはないと思えたのは、何よりもあなた方が、守るべきことを守ってくれたおかげ。だから、まずはあなた方自身に感謝を送ってください。ステージ上はいつも通りのライブだったから、TOSHI-LOW酒飲んでるじゃねえか、細美武士に酒飲ませてんじゃねえかっていう声もあるかもしれない。でもね、どんなに新しい世界になろうとも、まず大事なのは楽しむこと。自分たち自身が楽しむ中で答えを見つけていくことが大事だと思ってる。俺たちはコロナっていう同じ時代を生きて、ここで見つけた何かを次の世代に伝えていかなくちゃならない。夢みたいな世界をともに生きているのなら、夢みたいな世界をともに楽しんで、最後に全員がいなくなる前に伝えていきたいよね」

新しい価値観、新しい距離感を拒むのではなく、それを真っ向から受け入れた上でいかにして楽しみ、自由を感じながら生きていけるのか。その模索までをイベントの随所で正直に見せ、その上で、変わることのない音楽の喜びを存分に謳歌する。言葉にすればたったそれだけだが、自由という言葉のリアリティが変わっていく今だからこそ、音楽を通じて表現し続けた自由を守るためにどうしたらいいのかを探求する場所としての稀有さが際立つ2020年の『New Acoustic Camp』だった。OAUが奏でた「New Tale」や「夢の跡」は、過去曲へのノスタルジーではなく、ファンタジーと現実がことごとく引っくり返った世界を真っ向から迎え撃つためのファンファーレとして聴こえてきたのだった。



公式HPに掲載された「New (Lifestyle) Acoustic Camp 2020 新型コロナウイルス感染症対策に対するご協力への御礼とご報告」
https://newacousticcamp.com/news/2020/10/05/1561/

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