WONK密着取材で迫る、未来的バーチャルライブの舞台裏

リアルの代替ではない「新しい提案」、この世界を歩き続けるために

ライブを終えた直後のメンバーに話を聞くと、それぞれが上気した顔でライブに対する確かな手ごたえを話してくれた。

「達成感がすごいですね。たくさんの方々がご協力してくださって、僕ら4人だけじゃ絶対にできないことをやったっていう感じがすごくしたし、ひさしぶりにこういう新しいことに挑戦して、それを最高の形で終えられたので、今はその達成感でいっぱいです」(長塚)

「今年一番楽しかったですし、次のライブエンタテイメントの世界を垣間見ることができたんじゃないかなって、自分で演奏しながら思いましたね」(江﨑)

「次世代のライブエンタメっていうのは本物のライブの代替じゃないと僕は思っていて。ホントのライブはホントのライブとして生き続けるけど、それとは全然違うエンタメができてもおかしくはないわけで、そうやって視野を広く持っておくことは、WONKで大切にしたいと思っていることだし、それが一個実現できたのはよかったなって」(井上)

「こんなにたくさんの人が関わって、こんなに作り込んだライブは初めてだったので、すごく楽しかったです。僕の中では『文化祭』の一言に尽きますね(笑)」(荒田)


左上から時計回りに、WONKの長塚健斗(Vo)、江﨑文武(Key)、荒田洸(Dr)、井上幹(Ba)。本番4週間前の7月25日、池袋・STUDIO Dedeにて。

WFLEの坂田もまた、配信ライブの新たな可能性を確かに感じていたようだ。

「ただ配信ライブをやって、YouTubeでミュージックビデオ見るのと同じじゃんって言われないように、圧倒的なクオリティがありつつ、生のコミュニケーションもしっかり取って、90分のライブをやり遂げることができたっていうのは、かなりの可能性を感じました。ただのライブって考えちゃうと、やっぱり実際に演奏をしているのは映像の向こう側なので、そこで終わっちゃうと思うんです。でも、そこにストーリーラインとか、どういうメッセージがあるのかを加えることで、それこそ『EYES』のコンセプトである『聴く映画』みたいな、違うものとして捉えることができると思うし、そこでお客さんが見たいものと、アーティストが表現したいものが合致して、期待値がずれずにコンテンツを届けることはできると今回感じました。想いを持ったアーティストさんが本気でやりたいと思えば、こういうライブもできるんだなっていうのは、すごく思いましたね」

コロナ以降の世界がこれからどうなって行くのかは、まだ誰にもわからない。ガイドラインに沿って、観客を入れたライブも少しずつ再開されてはいるが、いかに感染のリスクを軽減するのかは今も課題だし、その場にいながら動いたり声を出したりすることができないのであれば、そこに価値を見出すことができるのかどうかも、人によって様々な意見があるだろう。その一方でのメタバースの表現も、今後ますます進展していくことは間違いない。ただ何にしろ、この日WONKが体現したリアルとバーチャルの融合は、新たなライブエンタテイメントの可能性を提示しただけでなく、「自分と違った存在が自分の人生において何かしらの糧になるはず」という価値観を明確に打ち出したという意味で、音楽だけにとどまらない、今後の世界のあり方のひとつのヒントになったと言えるはずだ。今回のライブをスポンサードしたウイスキーブランド「ジョニーウォーカー」のメッセージであり、バーチャル空間のステージ横に設置された看板にも書かれていた「KEEP WALKING」の言葉通り、僕らはこの世界をこれからも歩き続けなければならない。



「ライブっていう体験を漠然と捉えると、『今はできないじゃん』ってことになると思うんですけど、何がライブという体験の面白さなのかをちゃんと自分なりに咀嚼して、リアルじゃないことで損なわれてしまう部分に、他の何かをくっつけることで面白くなる、みたいなことって往々にあると思っていて。今回もリアルな会場でできないから、その代替を探すんじゃなくて、じゃあ、CGのどデカい会場でっていう、+αを形にしたわけで。制限がある中でも、そういうマインドが広がると、もっと面白くなるんじゃないかな」(井上)

「ライブの醍醐味は生音じゃないですか? ライブに行く理由の6割が生音っていう体験に占められてるとしたら、じゃあ、そこをどうやって埋めていくかって考えるのはすごく楽しかったんですよね。6割の代わりに何の要素をつけ足して、配信ライブならではの良さを見出すか。その6割を埋めるのはいろんな要素があると思うんです。逆に言えば、その6割を補てんしないまま、ただライブ配信しますっていうのはつまらないですよね」(荒田)

「今って生でライブができなくて、仕方なく配信をやるっていう風向きのものも多くて、マイナスに捉えがちだったりもすると思うんですけど、これからはもっとアーティスト側が『配信だからこそできること』にトライしていく姿勢が大事なんじゃないかなって」(江﨑)

「今の状況はすぐに終息することはないだろうし、リアルのライブをすることは今後も簡単ではないと思うので、配信ならではのことを今回ひとつ形にして、アウトプットできたことは、音楽業界全体にとってもひとつ大きな成果になったんじゃないかなって。トラヴィス・スコットは『フォートナイト』の中でイベントをやりましたけど、あれはラッパーだから、楽器を使わないからこそできたことで、僕らはバンドでのライブをCGの世界でやるっていう新しい提案ができたと思う。これをきっかけにして、周りのミュージシャンたちにもそれぞれのやり方でトライをしてほしいなと思いますね」(長塚)


【関連記事】WONKの江﨑文武が語る、常田大希や石若駿ら同世代と共有してきた美意識



WONK
『EYES SPECIAL 3DCG LIVE』
2020年12月2日発売

3DCGライブが映像化、WONK初のBlu-rayリリース
※LIVE本編:約107分
※特典映像:Picture in Picture収録
予約:
https://store.epistroph.tokyo/
https://store.universal-music.co.jp/product/poxd23001/


BLUE NOTE TOKYO LIVE 2020
2020年11月1日(日)、2日(月)
会場:BLUE NOTE TOKYO
※11月1日(日)2ndショウのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:11月8日(日) 11:59pmまで
公演詳細:http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/wonk/


WONK
東京を拠点に活動するエクスペリメンタル・ソウルバンド。2016年に1stアルバムを発売して以来、国内有数の音楽フェス出演、海外公演の成功を果たす。メンバーそれぞれが他アーティストとコラボレーションを行うなど活動領域を広げている。2020年4月にシングル「HEROISM」、6月に「Rollin’」を配信。6月17日にアルバム『EYES』をリリース。

Photo by Shintaro Kunieda, Naoki Sato

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