【密着ルポ】若きバンドの挑戦、FAITHが無観客配信+ライブハウスで見せた「生と死」の物語

なぜここまで「味」のある演奏ができるのか?

定刻から遅れてオープニングムービーが流れ始める。Akariによる英語のナレーションで、「今まで見たことのない世界へみんなを連れて行くよ」「人生で最も必要なものを探すのを手伝うよ」といった言葉が伝えられたあと、メンバーがステージに登場し、オープニングナンバーとして新曲「Headphones」を披露した。配信側の音は非常にクリア。リバーブが薄くしかかかっていないので、演奏がより生々しく聞こえる。言い換えると、演奏のミスや歌のヨレみたいなものが目立ってくるのだが、それはまったくない。それなりにキャリアを重ねてきてはいるが、FAITHはまだまだ若いバンド。それなのにこの安定感はすごい。テクニックに走るバンドではないのであまり目立たないが、FAITHは上手い。しかも、テクニカルというより演奏に味がある。たとえば、ドラムのルカは派手なプレイをするわけではないが、簡単にはマネのできない大きなグルーヴを生み出す。これがFAITHサウンドの根っこを支えていると言っていい。


Photo by Kazushi Toyota


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ギターのヤジマはFAITHで一番元気のあるメンバー。余裕たっぷりにカメラにアピール。彼の場合、場馴れしているというよりも、人間的な魅力が溢れ出ている感じ。しかも演奏力の向上も著しい。レイとのコンビネーションも息ぴったりで、「Our State of Mind」~「CHAMP」では、彼らのぶっといギターフレーズが効果的なブリッジになっていた。


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Akariはフロントウーマンとして堂々たる姿勢を示した。カメラにぐるりと囲まれている特殊な状況にも物怖じすることはない。彼女は元からこうだったわけではない。以前はステージ上でどう振る舞うのがベストか迷っているところもあった。つい1年前ぐらいの話である。

「CHAMP」が終わると、モノクロの映像が挿入される。英語でAkariが友人と電話で話している。どうやら気になる男子に関する相談しているようだ。彼女は「前向きだよ」と口では言うものの、映像のトーンは暗く、レイが制作したサウンドエフェクトも重苦しい。


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そこからセカンドブロックへと移ると、衣装チェンジした5人が登場し、発表されたばかりの新曲「Ironyi」をプレイ。映像からライブへ移る流れが実にスムーズで、生配信に見えない。まるで映画のようである。ラテンのリズムを取り入れたこの曲はFAITHの新機軸。Akariは物憂げに歌い、舞う。ふとカメラに向けられる彼女の視線にドキッとさせられる。ヤジマのいぶし銀なギターソロがかなり渋くて惚れ惚れするが、レイの正確でタイトなリズムギターにも痺れる。


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「DON’T FALL」前のセッションパートもよかった。ここまでサポート役に回っていた荒井がグッと前に出てきて存在感をアピール。このあたりからバンドのギアが一段上に上がった感覚があった。5人全員がしっかり向き合うセッションパートが彼らに安心感を与えたのかもしれない。Akariの歌に力がさらにこもったように見える。この曲が始まってから、現場スタッフがグッと演奏のグルーヴに引き込まれているのが見て取れた。みんな、大きく体を揺らし始めたからだ。

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