スマパンのビリー・コーガンが語る不変の音楽愛、父になって訪れた変化、日本への想い

『メロンコリー』『マシーナ』続編の展望

−なるほど。ちなみに『CYR』は、前作『No Past, No Future, No Sun』に続く「Shiny and Oh So Bright」シリーズの第2弾という位置づけになるわけですが、ジャケットこそ同じイメージを踏襲しながら、サウンドはかなり変わった上で、ヴォリュームも倍になっています。

ビリー:前作には8曲しか入っていなかったからね。今作は12曲も多いんだ。

−作品の構成が変わっても、全体の流れに影響はないと判断したのだと思いますが、そうした判断の基準が何かあったりするのでしょうか?

ビリー:別に秘密にしているわけじゃないけど、今ちょうど第3弾に取り組んでいるところなんで、そのアルバムが出たら第1弾から第3弾までのコンセプトについて話すよ。第3弾が出るまでは、話すわけにはいかない。まだ表面的には、何の関連性もないように見えるかもしれないけど、僕の中では関連しているんだ。

−では、第3弾が出た暁に、全てが明らかになるわけですね。

ビリー:明らかにされるアルバムが出ることを願おうじゃないか。



−それから、前作でプロデューサーを務めたリック・ルービンの仕事に対し、「リックは、我々が首を突っ込む時間を与えてくれなかった」という発言もあったようです。

ビリー:(笑)

−前作が短いアルバムになったのは彼の指示によるもので、本当はもっとスマッシング・パンプキンズらしく、たくさん曲が入ったものにしたかったという反動が今回は出たということだったりもするのでしょうか?

ビリー:そうだね。さっきも言ったように、個人的には、時間をかけた方が当然いいものが出来ると思ってる。でも、早く作業することによって得られるものもあるんだ。違うことが起こるんだよ。これは最適な例ではないけど、1992年にロンドンで『Peel Sessions』をやった時は、レコーディング時間が4時間しかなくて、全てライブ録り、後で手早くヴォーカルを加える程度だった。そういう、素早くやった時のエナジーも好きだ。僕たちは、アーティストに求められるものが多い世界に住んでいると思うから、スポンテニアスにやって成功を収めるのは難しいと思うけど、それでも僕はスポンテニアスであることのフィーリングが好きだよ。

−さて、現在は『メロンコリー〜』と『マシーナ/ザ・マシーン・オブ・ゴッド』の続編、そして「Shiny~」シリーズの第3弾に同時進行で取り組んでいるということですが、前者が先にリリースされるのですか?

ビリー:そう、『メロンコリー』と『マシーナ〜』の続編の方を、来年の暮れまでにはリリースしたいと思っている。「Shiny~」シリーズの第3弾は、その後のどこかでリリースされるよ。

−あなたの多作家ぶりに改めて驚かされますが、たくさんの曲を書くだけでなく、それらをどのアルバムに入れるかは最初から確定できているのですか?あるいは特にこの作品用だと決めずに曲を書いていても、それが収まるべき位置をすぐ判断できるのでしょうか?

ビリー:大抵は曲作りの道筋を立てておくんで、何をやろうとしているのかわかってるよ。たまに何のためでもない曲を書いて、いい曲だなと思うこともあるけど、多くの場合それが何のためかは把握できている。僕の中では、映画を作っているようなものなんだ。ある映画を作ろうと決まれば、全てのエナジーはその映画のアイデアへと向かっていく。心の中にあるイメージ、体のフィーリングは全て同じ映画を表わしている。視野が定まって、そのことしか考えられなくなるんだ。他のことは考えられない。

−異なるプロジェクトに同時進行で取り組んでいても、気持ちの切り替えは簡単にできるのですか?

ビリー:休暇をとっているようなものさ!(笑。1つのことにすごく夢中になって、次に行くと「これは別の島みたいだなあ」って思えるんだ。『メロンコリー』の続編よりも第3弾の方がピリピリしないで済むけどね。


『マシーナ/ザ・マシーンズ・オブ・ゴッド』収録曲「ジ・エヴァーラスティング・ゲイズ」

−さらに『マシーナ』の20周年記念エディションも進められているそうですね。

ビリー:そうなんだ。ここ数週間はそれに取り組んでいる。大変な作業だけどね。

−最初の解散前のラスト・アルバムとなった同作に向き合い直してみて、何か改めて気づいたことや、感慨深く思い出したことなどはありますか?

ビリー:どれだけクレイジーだったかを思い出したよ。僕たちは、アルバムを作る前に解散することを決めていたんだから。バンドが解散することがわかった上でアルバムを作るのは、すごく変な気分だった。悲しみに覆われたよ。恋愛関係にあった人間が別れることを決めたのに、まだいっしょにいる、みたいな感じなんだ。あのアルバムを作っている間中、「解散するのに、どうしてアルバムを作っているんだ?」って思っていた。

−すごく違和感があったんですね。

ビリー:そう、それが音楽に染み込んだんだ。音楽に悲しみが宿っている。これはとても珍しいことだ。いろんな意味で、このアルバムはとてもダークだね。そしてこれはコンセプト・アルバムでもある。ある意味、頭がおかしくなっていく男についてだけど、頭がおかしくなっていく男についてのアルバムを作っている間、僕も頭がおかしくなっていったんだ。

Translated by Mariko Kawahara

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