仮想通貨ビジネスにも参入 セレブラッパーの先駆け、リル・ヨッティの第二幕

ラップはいかに自分が楽しんでいるかを示す手段

ヨッティは時に、ラップはいかに自分が楽しんでいるかを示す手段だと語る。「俺は好きなようにやってるだけさ」。彼はそう話す。「それが楽しむための秘訣だからね。別にビルボードのナンバーワンを狙ってるわけじゃないんだ」。そういった姿勢は、キャリア初期に批評家たちから真摯さを疑問視された理由だったのかもしれない。ジョー・バデンはヨッティがレコード契約の意味を理解していないと批判し、ナズのビートを用いたフリースタイルを披露した『Ebro in the Morning』でのインタビューは物議を醸した。2016年、彼はビルボード誌のインタビューで、トゥパックとノトーリアス・B.I.Gについて「本当に5曲も知らなかった」と明かしている。『Ebro』での発言に端を発した「リル・ヨッティはラッパーではない」という見方は、その後何年も彼につきまとう。彼が当時まだ18歳だったという事実を、世間はまるで考慮していないようだった。「俺は他とは違う存在だった。異物と接したとき、世間は目を反らしたがるもんだからね」。ヨッティはそう話す。「2017年は、目覚めるたびにパンクしそうな数のメールがケータイに届いてた。ロクでもない内容ばかりだったよ」

そして現在、状況は大きく変わった。「リリカルな」ラップとヨッティのようなラッパーを比較する向きは、今ではほとんど見られない。ラッパーの定義は過去10年で大きく拡大され、次々と確立される新たなスタイルがクラシックと共存する状況が生まれた。タイラー・ザ・クリエイター、カーディ・B、そしてナズという過去3年間におけるグラミー賞の最優秀ラップアルバム賞の受賞者の顔ぶれは、そのことを雄弁に物語っている。

リル・ヨッティことMiles Parks McCollumは、過去10年間で音楽業界が経験した変化を象徴するような存在だ。サイバースペースで人気を確立した彼は、新曲の有無関係なしに世間からの注目を集める。3月に遠隔インタビューに応じた彼はとても落ち着いていて、質問への回答について熟慮していた。とはいえ、若者らしい溢れんばかりのエネルギーが失われたわけではない。取材の途中で、すぐ近所に住んでいる母親から電話があり、近所のスーパーで買っておいて欲しいものはあるかと尋ねられると、彼は甘えるような声で「Pop-Tartsを買っといて」と言った。「シナモン味のやつが食べたいな」

Translated by Masaaki Yoshida

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