仮想通貨ビジネスにも参入 セレブラッパーの先駆け、リル・ヨッティの第二幕

業界の実力者になるべき

その気になれば、彼は掃いて捨てるほどのPop-Tartsを買うことができる。彼が2016年と2017年に交わしたスポンサー契約の総額は、実に1300万ドルに上るとされている(「よく働いて、よく遊ぶってことだよ」。彼は金額についての質問にそう答えた)。最近公開されたある記事によると、彼が月に支払う諸経費の合計は5万ドル以上だという(「本当はもうちょっと多いよ。資産や保険がたくさんある上に、給与体系が複雑だからね」)。現在はシリアルのReese’s Puffsとのコラボレーション、カードゲームのUnoをテーマにした映画の撮影を進めているという彼は、いち早く仮想通貨ビジネスに参入したラッパーの1人でもある。昨年12月にはNifty Gatewayで「YachtyCoin」なるものを販売しており、Coinbaseのレポートによると、そのトークンは1万6050ドルで落札されたという。ヨッティはQuality Controlの創設者Kevin “Coach K” Leeによって発掘された際に、彼が語ったことを引き合いに出してこう話す。「ブランドを確立することの大切さを、俺は彼から教わった。ただのアーティストじゃなく、業界の実力者になるべきなんだ」

そういう考え方だからこそ、彼はチャートアクションに無頓着なのかもしれない。昨年、彼は最新作の『Lil Boat 3』を発表したが、パンデミックの真っ只中にして、警察官による黒人男性の殺害に対する怒りの声が全米中に広がっていた最中でのリリースは、リスナーの関心を集める上で良いタイミングとは決して言えなかった。「発売からの数カ月間、世界は混沌としてた」。ヨッティはそう話す。「アンラッキーだったけど、もっと重要なことが起きてたからね。仕方ないよ」。それでもなお、『Lil Boat 3』は良質なコラボレーションだけをとっても、聴き直すだけの価値のある作品だ。「Pardon Me」におけるフューチャーは水を得た魚のように生き生きとしており、同曲のミュージックビデオは暗かった1年において、純粋な喜びに満ちた特筆すべき作品のひとつだった。昨年11月にリリースされた、デラックス版の内容も申し分ない。プレイボーイ・カルティとフューチャーがゲスト参加した「Flex Up」は、ヴァイブスにこだわるヨッティの真骨頂だ。



「キング・オブ・ザ・ティーン」からラップ界の実力者へと転身を遂げたヨッティにとって、コラボレーションは有用なツールとなった。「俺がコラボレートするのは、個人的な友人であると同時に、心から尊敬しているやつらだけだ」。ヨッティはそう話す。「まだ世に出ていない、才能ある若手たちを引っ張り上げるのも好きだね」。ヒップホップの世界において、スーパースターとサイバースペースのヒーローの狭間という独自のポジションを確立したヨッティは、現在の状況に馴染んでいるようだ。「若い才能と絡むのがただ楽しいんだ。『うちと契約しよう、俺が育ててやる』なんていう感じじゃなくてさ」。ヨッティはそう話す。「彼らが置かれている状況を身をもって体験した俺は、何をどうすべきかをよく知ってるからね」

Translated by Masaaki Yoshida

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