リオン・ブリッジズが語る「レトロ」からの脱却、グラスパーなど音楽家との化学反応

グラスパーとジャズ、テラス・マーティンの影響

—冒頭の「Born Again」に参加しているロバート・グラスパーは同じテキサス出身ですね。彼はヒューストンだそうですが、彼とはいつ頃、知り合ったのでしょう?

リオン:ロバート・グラスパーとはフェスティヴァルで出会った。すぐに意気投合して、お互いの音楽がどれほど好きか語り合ったよ。今回、彼は曲が出来上がってから自分のパートを加えてくれた。リモート・セッションだった。「Born Again」はパンデミックから生まれた曲なんだ。リッキー・リードがライヴ・ストリーミングをやって、その中でビートを作ってくれた。歌詞も僕がパンデミックの中で感じたことについて書いている。孤独になって心地が良かったということについてね。すべてから切り離されて……。「Born Again」というのは聖書的なコンセプトが由来になっているんだけど、僕はそれを独りで過ごして浄化されたことになぞらえてみたんだ。

—ということはこの曲はアルバムの中でも最後の方にできたものなのでしょうか。

リオン:基本的にはそうだね。あと「Why Don’t You Touch Me」もパンデミック中に生まれた曲だ。



—あなたとジャズの間には、どんな関係が過去にありましたか?

リオン:正直に言って、僕のジャズの知識はごく僅かだよ。でも僕のカルチャーの中に根付いているものだと思う。うちの家系はニューオーリンズ出身だしね。だからどうしてもジャズへのオマージュを作りたかった。

—テラス・マーティンとは昨年、「Sweeter」でコラボしましたが、それがその後の曲制作に与えた影響はありますか?

リオン:「Sweeter」はGold-Diggersでのセッション中に書いた曲なんだ。その日はテラス・マーティンが初めてスタジオ入りした日だった。彼がいきなり、すごく美しいコード進行を吹き始めたんだ。僕はコードとメロディが曲を決めると思っているから、一瞬で曲が浮かんだよ。ソウルフルなメロディとモダンなスタイルのプロダクションとの並列がとても美しい。



—「Don’t Worry」にフィーチュアリングにフィーチュアリングされているInkについて教えてください。

リオン:Inkはジョージア州アトランタ出身の素晴らしいアーティストだよ。彼女のスタジオでのエネルギーにはみんな感化されたよ。毎日カウボーイ・ハットとカウボーイ・ブーツ姿でスタジオにやってくるんだ。このアルバムでは数曲に素晴らしいヴァイブをもたらしてくれた。コラボできて本当にハッピーだよ。結果としてデュエットになったけど、あれは曲を書いていて自然にそういう流れになったんだ。彼女はあのデュエットだけでなく、他にも参加してくれた。「Sho Nuff」と「Don’t Worry」は一緒に書いたよ。



—「Don’t Worry」の曲の間奏にはブルーズ・ギターが登場します。ゲイトマウス・ブラウンのようなテキサス・スタイルのブルーズにも触れて育ちましたか?

リオン:うーん、そんなには触れていないな。父親はB.B.キングが好きだったけど、スティーヴィー・ワンダーやザ・ウィスパーズみたいなアーティストの方がより好きだったからね。自分が聴くようになったのはギターを弾き始めてからだな。「Twistin’ And Groovin’」(『Coming Home』収録)という曲を書いたとき、友人にブルーズのコード進行をやって見せてくれと頼んだのを憶えている。それが僕にとって初めてブルーズに触れた瞬間だったね。

—この曲にブルーズ・ギターを登場させようと思ったのは?

リオン:あれは、ネイト・マーセローが曲の雰囲気をああいう風に解釈して弾いたんだ。すべて自然発生的だったよ。何をどうしようとか具体的なアイデアを誰かが持っていた訳じゃなくて、その場の雰囲気に寄り添う形で生まれたんだ。

Translated by Sachiko Yasue

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