リオン・ブリッジズが語る「レトロ」からの脱却、グラスパーなど音楽家との化学反応

内省と人生のアップダウン

—ラストの「Blue Mesas」 はアメリカの古いフォーク・ソングやスピリチュアルを思わせますね。アンビエントな雰囲気がすてきです。この曲に貢献しているDJ Stanfillについて教えてください。

リオン:あの曲が生まれたいきさつは……確か彼がどこかを旅していたんだ。どこだったか正確には憶えていないけど、旅先からあのインストゥルメンタルを作ってくれた。リッキー・リードに聴かせてもらって、すぐに共鳴したよ。いつも言っているように、曲を決めるのは音楽とメロディだからね。あの曲を通じて、自分が名声を得て経験したこと、本質的には鬱について書こうと思ったんだ。

—あの曲の歌詞にはクエスチョンマークがたくさん出てきますよね。あれは自分自身に何かを問うているのでしょうか。今まで通ってきた道、特にプロになってからについてですとか。あるいは今までの人生全体について?

リオン:そうだね。内省に近い。その時に自分が感じていること、色んな思いが巡っていることを表現しているんだ。ほら、成功して名声を手に入れると、ある程度の孤独や重圧がつきものだからね。僕自身はその感情を秘めているうちに、最終的にはとても気が沈んでしまった。名声に伴う期待というのは、自分を愛している人たちに囲まれている時ですら自分を蝕んでしまうものなんだ。振り返ってみると、この曲や『Gold-Diggers Sound』は人生の様々な側面をまとめているような気がする。人生は素晴らしいことばかりじゃないけど、時として本当に素晴らしい瞬間が訪れることもある。そういう瞬間をとらえたいと思ったんだ。人生のアップダウンをね。

—その考えは曲の並びにも影響しているのでしょうか。このアルバムは冒頭で、パンデミックがきっかけで生まれた「再生(born again)」を歌い、最後に疑問符(?)だらけのこの曲に到達して、終わります。このような構成、曲の並びにした特別な理由はありますか?

リオン:曲の並びは全体がシームレスに次に流れ込むような感じにしたかった。それを中心に置いて考えた。ただ、「Born Again」で始めるのはとても理に適っていると考えたんだ。そこから1つの旅に出かけていくような感じ。ここには心が軽くなるような人生のワンシーンがあって、また別のところでは恋をしていたり、誰かに魅了されていたりする。エンディングはもっとダークなトーンで、疑問符で終わる。このアルバムは、僕がようやくあらゆる抑制から解放されるチャンスを得て、自分自身に共鳴するものを作れた。それが僕にとって何より大切なことだった。特定のサウンドにこだわりすぎて、閉じこもってしまうんじゃなくて、すごく自由に作ることができたアルバムなんだ。


Photo by Pavielle Garcia

—あなたの色々な面が現れているアルバムですね。ところでアメリカ以外の国の音楽で、刺激を受けているものはありますか? どのようにして、それに出会いましたか?

リオン:どうだろう、ひと頃好きで、久しぶりに思い出した人たちがいる。ティナリウェンというバンドでね。無知で申し訳ないけど、確か西アフリカ出身だったと思う。ツアー中にあるレストランに入ったら、曲が流れてきたんだ。すぐに「このバンドは一体?」と思ってShazamで調べたら、アトランタでショウをやることが判った。偶然、僕もアトランタに向かっていたから、現地で彼らのライヴをキャッチしたんだ。デザート・ブルーズみたいな感じのサウンドだよ。

—それはいつ頃?

リオン:あれはいつだったかな……2020年の初めくらい。

—コロナ禍の直前ですね。観られてよかったですね。

リオン:本当だよ! 言われてみればそれが最後に観たコンサートだった(笑)。




リオン・ブリッジズ
『Gold-Diggers Sound』
発売中
視聴・購入:https://lnk.to/LeonBridges_GoldDiggersSoundRJ

Translated by Sachiko Yasue

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