BREIMENワンマン完遂、真の表現者たちが追究する「自由」の意味

社会の中にいる自分のこと、そして人間愛について、音楽を鳴らし続けている

開場中のBGMには尺八や箏の音を鳴らし、和をテーマにした衣装を身に纏ってステージに上がったこの日、1曲目に演奏したのは最新曲「あんたがたどこさ」(1月26日リリース)。日本人なら誰しもが知ってる、童歌「あんたがたどこさ」をモチーフにした楽曲だ。この童歌の起源については諸説あるが、日本に西洋音楽が入ってくる以前に生まれたものであることは確か。西洋音楽が輸入される前から日本人の血に流れているリズム感・揺らぎや旋律、語感を取り出して、クラップという肉体性丸出しなリズムからマリンバや現代的なビートも混ぜて展開していき、さらにAIのような声で「ギター」と鳴らしてハードロック調のギターソロに入るなど、非常に面白い構成に仕上がっている。この曲から感じることは、音楽的なセオリーから自由になろうとする気概と、無意識の中でとらわれている規則や規範から意識的に離れて、本来自分の心や身体に備わっているものや純粋に反応するものに向き合おうとする意志だ。



昨年11月にリリースされこの日の7曲目に演奏された、「猫踏んじゃった」のフレーズを引用しアレンジした「CATWALK」も同様だ。いかに音楽的セオリーから自由になれるか、そして自分の血に流れているものを出せるかということが、BREIMENがこの先さらに追究しようとしていることかもしれない。「あんたがたどこさ」でそんなサウンドに乗せて歌われるのは、出身地や肩書きといったラベルに縛られず、今目の前にいる人から発されるものを受け取って、人対人で向き合おう、といったもの。この曲でもまた、音の表現と言葉の表現が見事に一致している。



この日のステージセットには、BREIMENの「I」がそびえ立っていた。それに触れて、高木が「(I=私、アイ=ラブであることから)ずっとアイを探しているっていうコンセプトのバンドにするのはどうかな」と話す場面があった。サトウに「俺はアイを知ってるから」とツッコまれて笑いが起きていたが、BREIMENが「私」と「愛」を歌うバンドであるということは何も間違ってなければズレてもない。1stアルバムの『TITY』は「アイデンティティ」から用いた言葉であったように、BREIMENは社会の中にいる自分のこと、そして人間愛について、音楽を鳴らし続けているのだから。


Photo by renzo masuda

ソングライター・高木の人生観や、バンドとしての佇まいが、リアルに作品に昇華されている。そしてそれを受け取ってライブ会場をあとにしたとき、自分自身と自分の目に映る他者に対する目線が少し変わった感覚があった。それだけで十分、BREIMENの音楽・ライブは素晴らしいアート作品であると評するに値する。さらにその上で、これまでのセオリーに捉われずに、歴史を継承した上で更新する音楽を生み出し、オリジナリティを追求しようとする姿勢とスキルも獲得しているのだから、彼らの今後にはどうしたって期待をしてしまうのだ。


Photo by renzo masuda


Photo by renzo masuda

【関連記事】BREIMENの高木祥太が語る、私小説的な歌の世界と音楽ルーツ

【配信チケット詳細】
BREIMEN ONEMAN LIVE
ANTAGATADOKOSA
配信チケット
アーカイブ〜2022/1/21(金)23:59
視聴チケット価格:¥2,000〜
https://eplus.jp/sf/detail/3400550003

【リリース情報】
2022.1.26 Release
BREIMEN Digital Single
「あんたがたどこさ」
https://ssm.lnk.to/Antgtdks

【ライブ情報】
スペースシャワー列伝 第147巻
~幽玄(ゆうげん)の宴~
2022.1.28(金)東京・Shibuya eggman

<出演>
Ochunism
chilldspot
BREIMEN

チケット詳細
https://eplus.jp/sf/detail/0142620001

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