RADWIMPSが約2年3ヶ月ぶりのツアーで魅せた前へ進む覚悟

ツアーの折り返し地点であり、RADWIMPSにとって2022年のライブ初めとなった幕張メッセ2DAYS。1曲目の「TWILIGHT」へ導くオープニングのSEが鳴り始めると同時に1万人のオーディエンスの視線がステージに注がれ、その先には下手から上手に向かってサポートドラムの森瑞希、ベースの武田祐介、ボーカルの野田洋次郎、サポートギターのTAIKING、同じくサポートギターにして楽曲によってはシンセも弾く沙田瑞紀、もう一人のサポートドラマーであるエノマサフミの6人がほぼ横並びで立っている。バンドサウンドとEDMの方法論が融合し『FOREVER DAZE』屈指の光量の高さを誇る「TWILIGHT」の音楽像とレーザー光線が乱反射する照明の演出が、会場全体の高揚感を一気に引き上げる。続く「桃源郷」はロックバンド然とした躍動感と熱量に満ちていて、このツアーで練り上げた充実のグルーヴ感がむき出しになっていた。左右のLEDビジョンに映し出されるメンバーたちの表情もまた活き活きと輝いていた。ギターが2人いるからこそ、洋次郎が歌に専念するシーンが増したことも今回のツアーで特筆しておきたいポイントだ。


野田洋次郎 (photo by Takeshi Yao)

「どうもRADWIMPSです。会いたかったよ!」

洋次郎がそう叫ぶと、「ドリーマーズ・ハイ」へ。ステージ中央のビジョンには光と色が鮮烈な化学反応を起こすようなモーショングラフィックがカオティックに生動し、それ自体が照明の役割も担っている。ちなみに今回の総合演出を手がけたのは映像作家の山田健人だ。『FOREVER DAZE』の収録楽曲である「海馬」や「MAKAFUKA」などにも顕著だったが、ハイパーな視座で楽曲ごとにディストピアとユートピアを劇的に切り替えそこに現出させるような彼の作家性が、RADWIMPSの最新の音楽世界、さらには6人のアンサンブルと濃密に共振していた。あるいは刺激的な演出が施されていたからこそ、リリカルな歌の魅力を極めてシンプルなステージングで届けられた「うたかた歌」のような楽曲もオーディエンス個々人に沁み入るように響いたといえる。今後もしこのツアーが映像化されることがあれば、こういった演出の妙もぜひつぶさに堪能してほしいと思う。

中盤のハイライトとなったのは恒例となっている「DADA」と「おしゃかしゃま」の流れだ。洋次郎が指揮者となりソロ回しが展開され、それぞれのプレイヤーとしてのスキルやパーソナリティがフィーチャーされていく。「おしゃかしゃま」で武田、TAIKING、沙田の3人はセンターステージに移動し、そこでバトル形式のような格好で互いのプレイをぶつけ合った。武田が会場の空気を震わせるスラップを披露すれば、TAIKINGはディープ・パープルの「Smoke on the Water」のあのフレーズを引用しつつハードなソロを奏で、沙田もフライングVでそれに応えながらギタリストとしての悦びを解放するようにしてフレーズを編んでみせた。洋次郎もまた「匿名希望」でセンターステージに立った。『FOREVER DAZE』の中で最もシニカルでダークなムードに覆われ、洋次郎が現行のトラップ/ドリルを昇華するようにして舌鋒鋭いラップを放っていくこの曲のただならぬ緊張感もまた、RADWIMPSのライブにとって不可欠な要素といえる。メインステージのビジョンにはのっぺらぼうとなった人間の不穏な映像がうごめき、センターステージにたどり着いた洋次郎が緑のレーザーに四方を囲まれながらオーディエンスの頭上にせり上がっていく演出も見事だった。

Rolling Stone Japan 編集部

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