ロードとデイヴィッド・バーンが語る、表現者としての葛藤とソングライティングの秘密

表現者としてのヴィジョン

ロード:あなたは内向的な方ですか? 今日みたいな1日の後は休みが必要か、それともむしろエネルギーを充填したと感じますか?

バーン:今の私は以前ほど内向的ではないよ。

ロード:社交的にもなれると?

バーン:そうだね。さっき見たかもしれないけど、私は誰にでも挨拶するからね。友達からは「誰彼構わず声をかけるのはやめなよ。相手は君のことを知らないんだからさ」なんて言われるけどね。

ロード:挨拶するのは素晴らしいことだと思います。

バーン:私は人と会話をするのが好きで、スーパーのレジ係なんかにもよく声をかけるんだ。何か面白いことを言って相手を笑わせることができたら、今日はいいことをしたって思える。とはいえ、内向的な部分は今でも残っているよ。私は一人でいるのが苦じゃないし、自分自身と対話することも時々ある。どうってことのない、ごく平凡な事柄についてね。

ロード:声に出して話すのですか?

バーン:時々ね。曲作りであれ他の何かであれ、私は1人で作業するのが好きなんだ。パンデミック以前のことだけど、時々1人でレストランに行って、カウンター席で本を読んだりするのを楽しんでいたよ。

ロード:私もです。店員さんも、そういう客には好感を持つと思うんです。1人で入ってくるお客さんって、あまり面倒を起こさないだろうから。

バーン:そうかもしれないね。


ロード&デイヴィッド・バーン 2021年8月8日、ブルックリンにて撮影 
Photograph by Shaniqwa Jarvis for Rolling Stone. Fashion director and styling on David Byrne: Alex Badia. Market editor: Luis Campuzano. Sittings editor: Thomas Waller. Set design by Gozde Eker. Lorde: Styled by Karla Welch for the Wall Group. Hair styled by Cameron Rains for Forward Artists. Makeup by Amber Dreadon for Cloutier Remix. Jacket and pants by Saint Laurent. Earrings by Mejuri. Byrne: Styled by Stephanie Tricola for Honey Artists. Grooming by Todd Harris. Suit by Hermes. Sweater by Brioni. Tailoring by Marius Ahiale for Lars Nord Studio. Sittings Editor: Thomas Waller

ロード:個人的に、あなたに聞いてみたかったことがあるんです。あなたの音楽を、私は母から教えてもらいました。その時聞いたり見たりしながら何かにケチをつけていた私に、母がこう言ったんです。「本物の音楽っていうものを教えてあげるわ」。その時に見せてもらったのが「Take Me to the River」のライブ映像だったんですが、それまでに感じたことのない衝撃を受けました。その映像を何度も何度も繰り返し観るうちに、あなたがほとんど瞬きをしないことに気づいて。マニアックな質問で恐縮なんですが、あれはショーマンシップだったのでしょうか?

バーン:その通りだよ。人間じゃないから瞬きはしないんだ。今思えば、震え上がるほど緊張していたんだと思う。私の動きは、まるで痙攣を起こしているかのように見えたかもしれないね。でもそれでいいんだよ。それがありのままの自分なんだから、何も恥じることはないんだ。

ロード:私はすごく感銘を受けました。あれがショーマンシップなんだとしたら、まさにその最高峰だと思います。

バーン:君の音楽は随分前から聴いているよ。驚かされたことの1つは、すごくミニマルだという点だった。ヴォーカルやハーモニーはとてもリッチなのに、ビートとキーボードっていう最低限の楽器だけで構成されてた。すごく驚いたし、勉強になったよ。

ロード:そう言ってもらえて嬉しいです。プロデューサーとして成長するにつれて、より多くの音を重ねるようになってきていて。

バーン:当初は誰かから口出しされなかったかい? 「この音が足りない、あれも足すべきだ」みたいな感じで。

ロード:まさにそうなんですよ。何気なしに「Royals」をSoundCloudで公開した直後に、アメリカのレコード会社から接触があったんですが、「正式な音源を作る時にはもう少し音を足さないと」みたいなことを言われて。「これが正式な音源です!」って言い返してやりました。



バーン:こうあるべきだっていうヴィジョンを、最初から持っていたんだね。

ロード:そうですね。アイラ・グラスは若さについて「センスはあるがスキルがない」と語っていましたけど、私はあの言葉がすごく好きで。何かを作ってみて、それが正しくないってことは分かっているんだけど、自分のセンスを信じることにしたら、それが結果に結びついたっていう。私は楽器もほとんど弾けないし、まともなミュージシャンとは言い難いんですが、昔から自分のセンスには自信を持っていました。

Translated by Masaaki Yoshida

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