ギターソロ完コピをめぐる複雑グルーヴ、イーグルスの王道曲から鳥居真道が徹底考察

実際の音源に合わせて弾いているうちにメロディラインと指の動きが体に染み込んでいきます。特に暗譜するつもりがなくとも覚えてしまうものです。その次に取り組むのは、いわゆる完コピに近い作業です。どこで音を出してどこで音を切っているか。どういうグルーヴで演奏しているか。チョーキングではどのようにピッチを変化させているか。ビブラートの揺れの具合はどうか。どういうアーティキュレーションが施されているか。どこをレガートで弾いてどこをスタッカートで弾いているか。どこで突っ込み、どこでためるのか。そのギタリストの癖はどういうものか。ピッキングの位置はネック側かブリッジ側か。ピックは浅く当てているか、深く当てているか。ピックの角度はどうか。もっとそれらしく聴こえるポジションはないか。こういったことを意識しながらコピーしていきます。意識するという表現はあまり正確ではないのかもしれません。身体的な勘で反応したものを、言語化して頭の中のメモとして残しておき、それを身体操作にフィードバックさせるといったほうがより適切なように思います。身体的な直感のほうが主体で、意識はあくまで直感をメモするサポート役という感じです。なるべく耳にバイアスがかからないよう気をつけて聴こえたままをコピーするようにしています。個人的な実感に過ぎませんが、思い込みが強くない人ほど楽器の上達が早いように感じます。私は言うまでもなく思い込みが強い人間です。

今述べたようなディティールにこだわりながら、お手本となる実際の音源に自分の演奏を被せる形で毎回録音していきます。これをする際に気をつけていることは自分が演奏するギターの音量を小さめにしておくことと、音源のギターソロを後ろから追っかけるようなタイミングで演奏することです。自分の演奏で音源のソロをマスキングしないようにしているわけです。なぜマスキングしないことが大事なのか。楽しさのあまり伸び伸びと弾きたい衝動を抑えるためです。飲み会などで酔っ払って喋っているうちに気持ち良くなってしまい、誰の話も聞かずに一人で延々喋っているというような状況を防ぎたいのです。ここでの主眼はギターの演奏よりも音源をよく聴いて模写することにあります。弾くことではなくあくまで聴くことがメインだといっても差し支えないのかもしれません。

Rolling Stone Japan 編集部

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