『ウエスト・サイド・ストーリー』時代を超越した名曲は、どのように生まれ変わった?

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スティーブン・スピルバーグ監督による『ウエスト・サイド・ストーリー』がいよいよ公開スタート。映画から21曲を収録したサウンドトラックの日本盤もリリースされた。巨匠レナード・バーンスタインが手がけたオリジナル版と同様、このリメイク版を語るうえでも音楽は避けて通れない。普遍的な魅力と新たな解釈について、荒野政寿(「クロスビート」元編集長/シンコーミュージック書籍編集部)に解説してもらった。

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音楽家にも愛されたバーンスタイン楽曲

作品賞、監督賞(スティーブン・スピルバーグ)、助演女優賞(アリアナ・デボーズ)、撮影賞、美術賞、音響賞、衣装デザイン賞と、アカデミー賞で計7部門にノミネートされたタイミングで、いよいよ日本でも封切られた『ウエスト・サイド・ストーリー』。ミュージカル/ミュージカル映画の古典である本作をスピルバーグがリメイクするというニュースには驚かされたが、蓋を開けてみると海外メディアでもおおむね好評で、オスカー像をいくつ獲得できるか注目が集まっている。

『ウエスト・サイド・ストーリー』の舞台版初演は1957年だが、カルチャーに及ぼした影響の規模で言うと、1961年に公開された映画版(邦題は『ウエスト・サイド物語』:ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス監督)の存在があまりにも大きい。躍動感溢れるダンスシーンと共に登場人物のヘアスタイルやファッションも反響を呼び、たちまち社会現象を巻き起こした。

影響力の大きさは音楽も同様。作曲レナード・バーンスタイン、作詞スティーブン・ソンドハイム(昨年91歳で死去)のコンビによって生み出された楽曲は、オリジナル・ブロードウェイ・キャストによるLPが全米5位まで上昇、映画のサウンドトラック盤も54週にわたって全米1位に君臨するベストセラーとなった。

カバーの多さも本作の影響力を物語る。「トゥナイト」はシャーリー・バッシーのヴァージョンが1962年にイギリスで21位まで上昇。それと並ぶ人気曲の「マリア」も、ジョニー・マティスからサラ・ヴォーンまで幅広いジャンルのシンガーが吹き込んだ。同じくスタンダード化した「サムウェア」はトム・ウェイツによる強烈なカバーがよく知られているし、「ワン・ハンド、ワン・ハート」はリッキー・リー・ジョーンズ&ジョー・ジャクソンのデュエットが忘れ難い。





本作の曲はプログレッシヴ・ロック勢にも人気があり、イエスは「サムシングズ・カミング」、キース・エマーソンが在籍したナイスは「アメリカ」に独自の解釈で臨んだ。「アメリカ」はバーンスタインが南米旅行中に触れたワパンゴのリズムからヒントを得て6/8拍子と3拍子を繰り返す形にした曲。そうした実験に加え、ジャズやリズム&ブルースの影響も顕著なバーンスタインの楽曲は、探求心旺盛な若いミュージシャンたちの創造意欲を大いに駆り立てたはずだ。



 
 
 
 

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