ロシアの立場を代弁マロフェーエフから報酬を得ていたとされる時期に、ハニックはニューヨーク・オブザーバー紙に、ロシアによるクリミア編入を擁護するなどロシア寄りのコラムを寄稿した。「ロシア人は1954年以来、キエフによるクリミア統治を容認してきた。信頼できる兄弟に家族の財産を任せるようなものだ」と彼は書いている。「しかしその兄弟が家族の一員ではなくなった時、ロシアはクリミアを自分の元へ戻したいと考えた。そしてクリミアもまた、ロシアに戻ってきて欲しいと願ったのだ」とハニックは主張した。彼はロシアの立場を代弁し、西側による制裁は「ロシアに対する攻撃であり、ロシアはクリミアに留まらざるを得ない」と言い、さらに「欧米はロシアを中国の方へと追いやろうとしている」と警告した。
2016年、ハニックはロシア正教会へ改宗した。彼の洗礼式にはマロフェーエフも出席し、ロシアの新聞を賑わせた。間もなくハニックは、世界的な保守主義運動の旗手となろうとしていた。2017年、彼はブダペストで開催された世界家族会議に出席し、移民排斥主義を掲げるハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相が行った基調講演の中で紹介され、歓迎を受けた。
ハニックは自らの講演で、『ゆかいなブレディー家』に代表されるファミリー番組は家長を軽んじていて、同番組に登場する「混合家族」の中では父親が「子どもの半分しか支配できていない」として、激しく非難した。ハニックは、同番組に登場する父マイク・ブレディーは、「同性婚を美化した」番組『モダン・ファミリー』へと続く危険な兆候だった、と主張している。
「これは戦いだ」とハニックは、聴衆に警告した。「ただし、フィジカルな世界ですべき戦争ではない」
情報戦士の一人であるハニックは、海外での生活が長かった。しかし彼は人目を忍んでいた訳ではない。つい最近の2019年に彼は、ハーバード・クラブ・パーム・ビーチで「ロシアの社会を変容させる新たな革命」について講演し、米国がもはや「現代ロシアを冷戦時代のソ連の延長として見るべきでない」理由について説いた。
2021年2月にハニックはFBIの聴取を受けたが、彼は連邦捜査員に嘘の証言をしたとされる。そして2022年2月の初めに彼は逮捕された。プーチンがウクライナ侵攻をしかける数週間前のことだった。
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