銃を手に取ることはアメリカ人の美徳 共和党候補者たちが中間選挙を前に過激化

銃賛成のCMが突如あふれた背景

だが銃賛成CMが突如あふれた背景には、憲法修正第2条の問題だけではない。1月6日の連邦議事堂襲撃事件は共和党が信じている「理想」をイメージ化してしまったのだ。民主党政権下で指から零れ落ちてしまった古き良きアメリカの姿を再び取り戻すため――すなわちアメリカを再び偉大にするためには、暴力も辞さないことをあからさまに、またはそれとなく称賛する候補者が共和党には必要だ、と改めて知らしめている。

「まるで過激派の運動です」と言うのは、共和党戦略家でリンカーンプロジェクトの共同設立者でもあるマイク・マドリード氏だ。「共和党の支持基盤、少なくともその大半はすでに過激化しています。部族の問題に対して誰よりも熱心かつ積極的であることを示すには、大義のために戦う用意ができていることを陰に陽にほのめかすのが一番です。それが今起きている状況です。憲法修正第2条の問題ではありません。『私はこれだけ力を入れている、私はこれだけ熱心だ。喜んでこの問題に取り組み、部族のために戦う』ことを示す。それが全てです」

アイダホ州知事選に出馬しているジャニス・マクギアン候補も、CMでアサルトライフルを発砲しながらこう述べている。「憲法修正第2条は、鳥の狩猟をするために憲法に批准されたわけではありません」



「憲法修正第2条はこれまでずっと守りの姿勢でした」とマドリード氏は続けた。「常に『銃を取り上げるな』という形でした。それが今では根本的に違ったものになってきています。銃を所有すること、銃を手に取ることは美徳だと叫ばれています。権利ではなく、義務に近いと……この手の武器を中心とした社会の実現を望む声がもち上がっています。そこにはパライノアも多分に絡んでいますが、社会の構成員の感情がもはやコントロールできなくなっている社会の表れでもあります。彼らは『アメリカが消滅した』と感じている。過去の遺物となってしまった、奪われてしまった。悪者が誰であれ、そいつから身を守る唯一の方法は、金塊や缶詰、そして大量の武器を備蓄することだと考えているのです」

フィリプコウスキ氏同様、マドリード氏も政治広告で銃がますます「多用」されている現状に気づき、2024年までに共和党は混乱を引き起こすだろうと考えている。「銃を振り回し、銃文化にのめり込むことは“革命的”だと考えられています。ここでいう“革命的”とは、彼らの中では“アメリカ”を守る者としての最高の美徳ととらえられています」と同氏。「1776年当時のような、愛国者的な言い回しです。そこでは常にアメリカ国旗がはためいています。こうしたばかげた『アメリカらしさ』の定義は、選挙サイクルのたびに共和党内でますます激しくなっています」

Translated by Akiko Kato

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