ブロッサムズが語る「変化」への飽くなき挑戦、アークティックとThe 1975からの学び

 
「新しいことを達成するには変化を追い求めなければいけない」

トムは、世の中がパンデミックに見舞われた頃に4作目のアルバムの曲づくりに着手した。パンデミック中は多くの人がそうしたように、人生についてじっくり考えたという。彼にとってそれは、ストックポート出身の幼なじみ5人組が、音楽業界で成功をつかむまでの道のりを図式化するというささやかなことでもあった。

「(ニューアルバムに収録されている)『Visions』という曲には、“23歳の時、僕は完成されていたのだろうか?”という歌詞があるんだけど、23歳の時に僕らは(全英アルバム・チャートで)1位をとり、後に僕の奥さんになるケイティと一緒になった。でも、そこからどうしていいかわからなかった。そんな時、プロデューサーのジェームズ・スケリーに『それをアルバムのテーマにするべきだ』と言われて——そこから少しずつ物事がつながりはじめたんだ」

「紋切り型の存在になることは何としても避けたかった。それにジェームズ(・スケリー)は、そうならないように徹底してサポートしてくれた」とトムは言い添えた。スケリーは、リッチ・ターヴェイとともにブロッサムズの全アルバムのプロデュースに携わっている。

このほかにも、ニューアルバムに収録されている最新シングル「The Sulking Poet」には思いもよらないインスピレーション源が登場する。ソルト曰く、どの曲よりもポール・サイモンの影響を堂々と掲げているのが「The Sulking Poet」だ。曲名は、ジョーが以前ソーシャルメディアで見つけた熱狂的なファンアカウントに由来する。

「『Ode to Ogden(オグデンに捧ぐ頌歌)』というファンアカウントをInstagramで見つけたんだ」とジョーは言う。「こりゃ傑作だと思って、すぐトム(・オグデン)に見せたよ。アカウントには『ふくれっ面の詩人(the sulking poet)の素晴らしさを称えるために』という紹介文が添えてあった」



実際トムは、バンドの主たるソングライターとして常に難しい役割をこなす。彼自身は、こうしたファンの期待に応えられていると感じているのだろうか?

「ソングライティングに関しては、必ずしもそうとは言えない。でも、ここ数年は『笑って』と言われることが増えたよ」とトムは言う。「ファンとの写真のほとんどで、僕は尻を叩かれたみたいな顔で写っているんだ」

ニューアルバムは2020年の前作『Foolish Loving Spaces』からの成長を表すと同時に、自らのサウンドに満足感と安心感を抱きながらも、最初の成功をもたらしたフォーミュラに手を加えることをいとわないバンドの姿を示している。



キャッチーなポップチューンに長けたおなじみのブロッサムズ節は健在だが、マイルスが手がけたジェームズ・ボンド風のストリングスのアレンジメントとともにニューアルバムが締めくくられている点は、それ以上のことを教えてくれる。聴いただけでそれとわかるキャッチーな旋律の弾き手は、普段であればマイルスだ。

「人々に戦いを挑みたい、という側面がある」とトムは言う。

「すべての人を喜ばせることは不可能だけど、挑戦することで僕らは新鮮な存在でいられる。変化は善だ。いつも同じことばかりしていたらダメなんだ。アークティック・モンキーズが最新作を通じて成し遂げたことを見て、僕らは脱帽した。バンドである以上、新しいことを達成するには変化を追い求めなければいけない」

Translated by Shoko Natori

 
 
 
 

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