『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』自身初の傑作アルバム誕生秘話

 
ニール・ヤングの人生も変えたアルバム

1963年4月、ディランは数曲の新曲を録音した。センチメンタルなラブソング「北国の少女」は、昔の恋人だったエコー・ヘルストロムとボニー・ビーチャー、そしてやっとニューヨークに戻ってきたロトロへの思いに着想を得たものとみられる。「ボブ・ディランの夢」もノスタルジックな作品で、このアルバムが発表された後、永遠に変わってしまうであろうとディランが感じ取った友情や地域社会をあらかじめ回顧している。

「僕らはただの子どもだったね」とヤローは振り返る。「考えることといえば、晩飯をどこに食べに行くかくらいのもので、ただ足を前に進めていただけだった。ボビーが牛用のムチを持っていて、僕らはそれを持って外に出て、意味もなくムチうちの練習をしていたことを覚えている。『ボブ・ディランの夢』は、そうしたことをとてもよく捕らえている」

これらの曲は当初は『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』には入っていなかったのだが、後にディランがこのアルバムを改訂する際に収録されることとなった。おそらくレーベルから、名誉棄損の可能性があったナンバー「Talkin’ John Birch Paranoid Blues」をアルバムから外すようとの要請があったことから、追加収録したものと思われる。

ことの経緯はともかくも、結果としてこのアルバムはより成熟し、よい出来栄えとなった。伝統的なフォーク・ブルースへの敬意の念が、軽快さと深みに置き換えられたのだ。

必ずしも全てのファンが新しいディランを受け入れたわけではなかった。ディランのミネソタの友達の1人は、「このアルバムは、おとぎの国へと漂っていってしまった。失敗作だ」と、フォーク原理主義の雑誌『The Little Sandy Review』に書いた。

しかし世界的には『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』は大きな反響を引き起こした。マニトバ州ウィニペグでは、ニール・ヤングという名前の少年がこのアルバムを聴き、他の多くの少年と同じく、人生の全く新しい可能性を考えることとなった。「僕はこんなふうに思った。『おい、ここにも自分流で新しい音を出している男がいるぞ。こいつは気に入った。僕にも曲が書けそうだ』」

From Rolling Stone US.




LP
『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』                                         
発売中(2022年4月27日発売)¥4,180(税込)
購入:https://SonyMusicJapan.lnk.to/FreewheelinLP

[1] ソニーミュージックグループ自社一貫生産アナログ・レコード、180g重量盤、完全生産限定盤
[2] 2022年Sony Music Studios Tokyoにてカッティング
[3] 新対訳&訳者ノート(佐藤良明)付
[4] 日本初発売時の解説(中村とうよう、ナット・ヘントフ)、2013年解説(クリントン・ヘイリン)、補足(菅野ヘッケル)収録
[5] ジャケット外装(A式ジャケットを採用)、日本初発売時のLP帯再現

祝・デビュー60周年アナログ・レコードの詳細:https://www.110107.com/dylan_60/

Translation by Kuniaki Takahashi

 
 
 
 

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