ポップスターたちが隠したい過去 ロシア新興財閥との蜜月

「オリガルヒや金持ち連中のために演奏するなんて、ヘドが出る」

ローリングストーン誌が検証したそれらのメールには、2015年にアブラモヴィッチ氏がスルコフ氏と家族をモスクワのパーティへ招待する招待状があった。ロビー・ウィリアムズや「その他アーティスト」が100人の親しい客の前で演奏し、その後花火が打ち上げられると書かれている。その後、ウィリアムズはロシア人オリガルヒをテーマにしたシングル「Party Like a Russian」をリリースしたが、この時のパーティにインスパイアされたものと見られる。

匿名を条件に取材に応じたイベント業界関係者は、アブラモヴィッチ氏のパーティに惹かれるのも理解できなくはないと言う。「この業界では、暇を持て余した人間がアーティストについて問い合わせしてきたり、大金持ちがわざわざ契約までしてイベントを開くんです」とその関係者は言う。「ですがアブラモヴィッチ氏の場合、ギャラが高額になるのは目に見えています。彼は金に糸目をつけません。それは確実でした。楽に稼げるいい仕事でした――誰にとっても美味しい話です」

その関係者は、アブラモヴィッチ氏が企業や土地を所有する国々に落とした金についてふれた――地元政府は何年も見て見ぬふりをしてきたことも。「アーティストに対しては『なぜ奴のために演奏するんだ?』と思うでしょうが、当然でしょう? 誰もがみな金をもらってるんですから」。業界全体の状況も、いつかは戦争前の状態に戻るかもしれないとその関係者は感じている。「保証はできませんが、戦争が終わって5年も経てばみな忘れてしまう。そうなればおそらく、これまで通りになるのではないでしょうか」

少なくとも現時点では、アーティストは金輪際この種の金は手を出さない。ウクライナでの戦争で、オリガルヒのために演奏することは好ましくないものになった。「今もあの地域の怪しい連中から大物アーティストの問い合わせが来ますが、シャットアウト一択です」と、アメリカを代表するイベントブッキング業者はこう語った。「関わり合いになるもんじゃありませんよ」。複数の大物ロックバンドを担当するマネージャーもこう付け加えた。「今の段階では、どのクライアントにもロシアでの演奏はおすすめできません。どんなに金を積まれても、最悪の事態になるでしょう」

「オリガルヒや金持ち連中のために演奏するなんて、ヘドが出る」とスティンソンも言う。「そうとしか言いようがないね」

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from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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