海外からラブコール殺到、カメレオン・ライム・ウーピーパイの圧倒的個性が求められる理由

 
「奇跡すぎる」結成までのストーリー

カメレオン・ライム・ウーピーパイの物語は2016年に始まった。ひとりで音楽活動をスタートさせたChi-は、自身2度目のライブで「最強の仲間」と語る、Whoopies(ウーピーズ)1号・2号との出会いを果たす。

「私はそもそも暗くてネガティブで、『死ぬ前に好きなことをやろう』みたいな理由で音楽を始めたんです(笑)。ひとりだった頃に作った曲も暗いものばかりで……。自分としても、ポップな曲を作れる人と組むことができたら、ネガティブとのチグハグさで面白いことになりそうだと思っていたんですよね。だから、キャッチーな曲を作れるWhoopiesと出会えたのは奇跡すぎて(笑)。今はもう何をやってもいい曲ができる、そこは自信あります」


Whoopies1号・2号

覆面を被るWhoopies1号・2号は、自分たちが追い求める音楽性にマッチしそうな「暗いマインド」を持つ声をずっと探していた。インターネットを通じてChi-の歌を聴き、「絶対にこの人しかいない」と確信した2人は、まだ音楽活動を初めて2カ月足らずだったChi-のライブへと赴く。その場で「一緒にやろう」と声をかけ、彼女が歌うことを想定して作った曲を聴かせると、Chi-もそのサウンドに衝撃を受け、すぐさま一緒に活動することを決心した。

そこから最初の3年間は、修行のごとくChi-がストリートライブに明け暮れながら、自分たちのスタイルを磨き上げることに専念。そして、2019年の終わりに満を持してデビューシングル「Dear Idiot」を配信リリースすると、Spotifyで多くの公式プレイリストに選ばれ、快進撃の起爆剤となった。その後は量産体制に入り、これまでシングル11曲、2021年の『PLAY WITH ME』、今年5月の『MAD DOCTOR』という2作のEPをリリースしてきたほか、コラボ曲やカバーなども発表している。



結成までのストーリーに加えて、もうひとつのミラクルは「やりたいことが似すぎている」と認めるほど、3人が価値観を分かち合えたこと。当初はWhoopies主導で楽曲制作をする形を想定していたそうだが、「アイデアの宝庫」だというChi-の才能に感服し、早い段階で3人対等の制作スタイルへと移行。さらに、楽曲制作やライブ活動だけでなく、アートワーク、MVの撮影・編集など、あらゆるクリエイティブを完全DIYで手がけるようになる。

「最初は単純にお金がなくて、自分たちでやるしかないからiPhoneで撮ったりしてたんです。でもその後、MVの撮影をプロの方にお願いしたこともありましたが、ニュアンスを伝えるのが難しかったし、感覚が合わないと厳しいものがあるなと思って」



カメレオン・ライム・ウーピーパイの表現が、絶妙なバランスで成り立っているのは間違いない。その突き抜けたセンスを、Chi-はこのように説明している。

「カッコイイだけじゃない、ダサくて遊び心があるのが大事だと思うんですよね。『これどうなってんだ?』みたいな、未完成でヘッポコな感じのほうが好き。映像については素人なので、MVも雑な合成とかになったりするんですけど、私としてはそれがよくて。アイデア勝負というか、上手くなくても全然いい」

ビースティ・ボーイズの無敵感をルーツに挙げているように、3人の音楽は自由そのもの。ここ1年弱のリリースでも、メロディアスな歌心が光る「Amefuri no Bambina」、パンキッシュで破天荒な「Love You!!!!!!」、『odelay』期のベックも想起させるファンクナンバー「Mole Dancer」まで、ジャンルに縛られない変幻自在ぶりを見せている。そのカラフルな佇まいは、Chi-が標榜するカメレオンの生き様そのものだ。





ここ10年のJ-POPでは、シティポップや渋谷系の再評価、ブラックミュージックの影響などもあり、洗練された音作りがトレンドだった。かたやカメレオン・ライム・ウーピーパイの音楽は、サウンドも情感もごちゃ混ぜで、言ってしまえばカオスそのものだが、それゆえフレッシュに感じるのは筆者だけではないはず。彼女たちの台頭は、いずれ音楽シーンの風向きすら変えてしまうかもしれない。

「『ジャンルを壊す』というのはずっと意識しています。流行ってる音楽のなかにこういう奴がいてもいいんじゃないかと思うし、自分たちの音楽が日本のスタンダードに加わることを目標にやってきたので。あと、私は昔から人とズレてるところがあって、自分の考えなんて受け入れてもらえないと思いながら生きてきたんですよね。だからこそ、流行とか周囲の評価を気にせず、『これが好きなんだ』という音楽を作っている。そもそも『消えたい』と思っていた頃に音楽を始めて、そこで覚悟が決まっちゃってるから、誰から何を言われても今さらブレたりしない。そこが自分の強みなのかなって思います」

 
 
 
 

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